好きなものとやりたいこと

今年も何かしらやるつもりではいたのだ。

 

去年の忘年会で私は、

「今年は一本しか公演できなかったので来年は二本やります!」

と、抱負を語った。言いながらも既に内心では無理…と思いながらも宣言した。自分を奮い立たせなければと思っていた。

結果、できなかった。二本どころか一本もできなかった。

 

発条ロールシアターを始めてから、宣言したのに実現できなかったことというのも幾つかある。

ただ今年のように、やらなきゃやらなきゃと思いながらもなし崩しにお流れにしてしまったのは初めてではないだろうか。

基本的に「やりたいことが無くなった時が辞め時」と思っている。

もちろん、絞り出してでもやるのがプロの当たり前の仕事ではあるのだけれど、発条レベル(いろんな意味で)の団体であれば、演出家の私と主宰の加茂克のどちらかに最低限やりたいことがある状態でなければ続ける意味が無いと思っている(問題は、それだと発条を楽しみにしてくれているお客様には本当に申し訳ないということ。最大にして唯一の、問題)。

 

去年の公演を終えた辺りからもう何もやりたいことが無くなってしまったと思っていた。でもやらなければ、とも思っていた。

一年休んだら、その後の復帰は大変だと思っていた。

三年前にも一度休んでいるのに、また休むくらいなら辞めた方がいいのではと思いつつ、なかなかふんぎりがつかずにいた。

 

そんな矢先、高校柔道にハマった。興味を持った丁度その時期に東京で大きな大会があったので観に行った。100㎏超級にすごく強い子がいて一発でファンになった。周りの席にいた他校の柔道部の子達が口々に名前を囁くのですぐに名前も覚えた。天理高校の中野寛太選手。スピードもパワーもあって技まで兼ね備えているのだ。ちなみに寛太と言えば「柔道部物語」の顧問の五十嵐寛太先生。天才・五十嵐と同じ名前というのも縁起がいい。

もう一人、ベスト8まで行った子でこの子の柔道好きだなあとファンになったのが福井工大福井の酒井晃輝選手。見た目がシュッとしてるせいか何となくスマートなイメージなんだけど、試合が始まると闘志溢れる感じで実に好み。この当時はまだ1年生だったんだけど個人でも団体でも全国大会出場なんだから凄い。

翌日の団体戦の決勝・天理対国士舘は会場中が盛り上がる好試合で、高校柔道ってなんて面白いんだろうと思った。

厳密に言うと高校柔道に限らずその後観に行った全日本も教員柔道大会もその他どの大会も面白かったしお気に入りの選手もたくさんできたのだけど、その中でも一番ハマったのが中野選手と酒井選手だったのだ。

高校生には他にも村尾三四郎選手とか、女子の阿部詩選手に素根輝選手など将来有望なスター選手がたくさん。

中でもやっぱり中野選手と素根選手は自分的に別格かな。どちらも超級の選手だけど、超級ってことは体重の上限が無いわけで、そうなってくると身長が高いほど重量も増やせるので有利(という理論なのかどうかは不明。私はそう解釈している)なんだけど、中野選手は180㎝、素根選手は163㎝。どちらも超級の中では決して大きくない。

※中野選手、現在181㎝とのこと(12月3日情報)伸びてる!成長期だもんね!!

 

小さい選手が大きい選手を倒すというのは格闘技において最高のロマンだと私は思っているので、そういうところも好きな理由かもしれない。

が、まあ理屈はさておき戦い方がカッコイイのだ。上手い!強い!カッコいい!これ以上の理由はいらないでしょう。

酒井選手にいたっては理由すら要らない。とにかく好き。あ、さっき理由書いたか。ファイトスタイルが好み。やっぱ理屈じゃないね。

 

ということで夏には三重県まで高校総体も観に行った。県内のホテルがとれなかったので連日の移動が疲れたけど、ものすごく満足した。

男子の団体は中野選手が国士舘の斉藤選手(こちらも超高校級。柔道といえばそう、あの斉藤さんがお父さん)に勝って見事に天理が優勝した。

女子の団体では、出場しないと思っていた阿部詩選手が出てきてくれた。

個人戦で酒井選手がまさかの初戦敗退のうえ脳震盪を起こしてしまったというアクシデントはあったけれど(その後ツイッター投稿してたし二か月後の国体にも無事に出場していたのでホッとした)、涙と歓喜が詰まりに詰まった充実の四日間だった。最終日だけ観られなかったのだけど、おおむね満足。

 

今までだったら夏は秋の芝居の台本書きと稽古の準備があって、絶対にできなかっただろう。

 

高校柔道に夢中になったのとほぼ同時期に、大学野球にもハマった。

最初は何となく気が向いてネット観戦してみただけだったのだけど、あっという間に早大野球部というチームに夢中になった。

早大野球部への愛はこれまでも日記に書いたので省略するけれど、秋のリーグ戦を迎える頃にはハマりにハマっていた。

 

本当は秋の早慶戦について熱烈な日記を書くつもりでいたのだけど、もう何から手をつけていいかわからなくて挫折している。

私が、というか観客が何に興奮したのか何に感動したのか。あの時神宮球場がどんな空間になったのか。

 

一言で言うならば、何もかもがパーフェクトだった。

選手達の思いや熱が、ビリビリと伝わってくる好試合だった。いや、選手だけじゃなく応援席もだろうか。あの場に居た全ての人間の気持ちが熱狂の渦をつくっていた。

これがマンガだったとしたら「ちょっとできすぎだろ」と突っ込むようなドラマが現実に起こっていた。

「最上級生の意地」というものを目の当たりにして、現実にこういうことがあるんだなあと、後になって振り返ってしみじみ思った。

ひとつだけ、早稲田にとってリーグ優勝を逃したことだけが残念と言えるかもしれないけれど、前年の最下位から春は3位、そして今回2位と順位を上げたことで、もしかしたら後輩へ最高のバトンを渡したとも言えるかもしれない。

まあ、ちょっと強がりではあるけれどそう言いたくなる。本当は早慶戦に勝利した涙に加えて優勝して喜ぶ姿も見たかったのは確かだけど。とは言っても最高の試合を見せてもらったことは間違いない。

 

リーグ戦が終わってから今日まで、毎日毎日春と秋のリーグ戦の映像をリピートして、日記を綴り、日記を書かない日は映像を観ながら実況ノートをつけた(そのまんま。スコアをつけたいところだけどつけられないので、代わりに試合の展開を感想と共にノートに書きつけた)。自分でもこの執着心には笑っちゃうと言うか呆れちゃう。

でも、本当に興奮状態が続いて、こんなことは初めてでどうしていいか自分の気持ちを持て余していたのだ。

4年生が引退してしまうことへの寂しさは日に日に強まった。

未練がましくずーっとずっと、試合を観たりインタビュー記事を読み返したりインスタやツイッターにあげられてる写真を眺めたり。

 

副将の黒岩選手を初めて見たのはネット中継だった。

ベンチで小島キャプテンの横でメガホンを持ってる姿が映って、

「え、何この人カッコいい。誰?」

と思ったのが最初だ。

 

スポーツ選手を顔で好きになるってどうよ、というのは私の個人的なこだわりというか引っ掛かりポイントである。別に何がキッカケでもいいんだけど、なんとなく

「勝負所はそこじゃありません」

と自分に突っ込んでしまう。なんか失礼な気がする。

でもしょうがないよね!好みなんだから!それに、どんなに顔が好みでもそれだけじゃそこまで好きになれないし!それは役者でもスポーツ選手でも何でも一緒!

そういえば安藤美姫ちゃんも顔とキャラクターに惹かれて好きになって、その後スケートを観て更に好きになったのだった。

いいじゃないか、見た目から入ったって。だってホントにすっごい好みなんだもん。美姫ちゃんも黒岩さんも。

その後、黒岩選手のプレーを目の当たりにして更に心惹かれたのはやはり足の速さが決め手だった。

しかし盗塁って野球の試合の中でも一、二を争うカッコいいプレーだよなあ。足の速さだけではなくて技術とか何か必要なんだろうけど。

 

黒岩さんは声がこれまた素晴らしいのだ。いい声。いい声にもいろいろあるけれど、私はまろやか過ぎる声よりも少し引っ掛かりのある声が好きなのだ。耳に心地よく、かつ物語性もある声。

ついでに言うとインタビュー記事の語り口も面白いからね、黒岩さんは。あと字が上手!小島さんとはまた違った上手さ。そして私は大きい字が好きなのだ。大きい字を書く人が好きなのだ。

そもそも第一に名前が完璧にカッコイイよね。黒岩さんだけでもカッコいいのに下の名前が駿さんだよ。ダイヤモンドを駆け抜ける黒岩さんにピッタリの疾走感溢れる漢字。音もいい。

顔も声もドンピシャに好みで、ほか諸々細々した部分もステキで、しかも副将になった理由が人望の厚さって!模範的な人柄って!もう私の想像の限界を超えていて、どんな人なのかまるで想像できない!

3年間ベンチに入ることなく、でもその人間性が評価されて副将になって、それからはベンチで声出して盛り上げて、出場した試合のここぞという場面では期待に応えて、最後の最後には華の早慶戦でスタメンからのまさしく総決算的な活躍で有終の美を飾った人…ってこの世に存在するんですねっ!!

 

声の良さのみならず、そのいい声で繰り出す喋りの内容も面白くて大好き。

norisuechie.hatenablog.com

こちらの、一番最後に紹介した映像の終わりの方に4年生たちの会話してる場面があるのだけど、ここでの黒岩さんがこれまた最高なので是非観て欲しい。

映像の締めのあたりで小島さんが、

「歳とった時に大学や高校の同期のメンバーとまた他愛ない話で盛り上がれたらいいなって思います」

的なことを言うんだけど、その直前の会話が他愛ないというよりはいい意味でものすごくバカバカしくて最高に面白い。

小島さんの言葉自体は、まあ何なら普遍的な願いというかウンウンと頷けるいい話なんだけど、直前の会話が会話なだけにちょっと普通じゃないものに仕上がっていて感心してしまう。

どれくらいの時間カメラ回してたかわかんないけど、よくぞこんないい話撮ってくれたなというか、いつもこんなアホな会話してるのかなとか。

私、この映像大好き。

 

アホな会話っていうと語弊があるな、やっぱり。

ほんの短い時間だけど、黒岩さんの言葉のチョイスも話の組み立て方もリズム感も、素晴らしくセンスがある。褒め過ぎ?だけど本当にそうなんだもの。

私は本当にプロレスラーでもバンドマンでもスポーツ選手でも、話術をとても重要なものとして扱ってしまう。自分がトークダメダメのままお笑いの世界から逃げたから、余計にそこに惹かれるのだろうか。芸人さんじゃあるまいし喋りが下手でも全然問題無いんだけど、上手いと評価が何倍にも膨れ上がる(例:ドラゴンゲート土井成樹選手。選手として最高な上に圧巻のマイクスキル。最高)。

ただでさえ話が上手くて面白い人は問答無用で好きなのに、黒岩さんがそのスキルまで備え持っているなんてもう最強じゃないか。

それでいて一人でいるのが好きとか言う人なんだよ、黒岩さんは。あーもうホントに何から何まで好みドンピシャなの、黒岩さんは!

 

 

寂しい。

しつこいようだけど本当にみんな大好きなのだ。黒岩さんだけちょっと特殊な形の好きも入っているけれど、みんな同じくらい大好きなのだ。チームとして丸ごとみんな好きなのだ。これは理屈じゃないのだ。寂しいのも理屈じゃないのだ。

4年生の進路は、プロに行く小島キャプテンのほか、岸本さんと、同じく捕手の中林さんは社会人チームへ。小太刀さんと西岡さんも硬式野球を続けるらしい。投手の増田さんは軟式だけど続けるという。

他の人は?

 

きっぱりと「自分の野球人生はこれでおしまいです」と明言してる人もいる。

一般就職しますという人は、ごく普通の社会人になりますよということなんだろうか。本当に?もうこれっきり?

いつまでもいつまでも未練がましく寂しがっている。

おそらく野球部の、更に言うと六大学の硬式野球部の練習なんて、私が味わったことも無いような厳しいものだろうと思う。そんな世界でここまで本気でやってきた人に対して「何かしらの形で続けてくれないかなー」なんて軽々しく発言するのはハッキリ言って馬鹿丸出しだと思う。我ながら、気持ちはわかるけど愚かしいと思う。

だからちゃんと現実を受け止めなければいけないと思うんだけど。

寂しい。

 

そんな風に悶々と思っていて、

今日、唐突に台本を書きたくなった。芝居を作りたくなった。

唐突過ぎて意味がわからないけれど、突然芝居がしたくなった。

これだけじゃあれなんで理由を分析して書きたいところだけど、そもそも芝居をすることに理由は無いんだった。

若い頃は何の疑問も持たず、理由なんて考えずにやっていた。

ある時期から、自分にとって芝居とは何なのか、何のためにやるのか、明確な理由を持ってやっていた。

そしてまたある時期を過ぎて、あれは震災の後だった。理由はなんだっていい、と思った。自分にとって芝居をする理由なんてものは無くなった。理由が無くても私は生きるし芝居をする、と思った。

 

だから今も、理由なんて無いのだ。

 

大学野球も高校柔道も毎日動画漁りしてるし、ドラゴンゲートも、現場には行けなくても中継は観ている。鷹木さんが参戦しているから新日も(ドラゴンゲートネットワークと新日のなんちゃらってやつに加入している)。フィギュアスケートはちょっとお休み状態で、年に一本だけは必ず行ってるショーの他は特に応援してる選手だけ映像で追ってる状態だけど。

 

今年は本当に趣味にどっぷり漬かった。充実していた。こんな日々を送れるってなんて幸せなんだろうと思った。

追いかけて応援する側で居たいと思った。頑張ってお金を稼いで、そのお金を全て趣味につぎ込みたいと思った。

そこまで稼いではいないけど、いつもよりも頑張って、いつもよりもだいぶ多くの自由になるお金を手にして、それを趣味につぎ込んだ。

幸せだった。

 

そして唐突に芝居をしたくなった。

 

気が済んだとまでは決して言わないけれど。

これから早大の新チームを応援しないといけないし、中野くんは大学生になるし、酒井くんはあと1年高校生だし、どうしても行きたいアイスショーがあるし、キッドさんや土井ちゃんを観ないで生きていくなんてそんな人生はつまらないし。

でも、それ以上に今は芝居をつくりたい。

 

なので、いつまで気力がもつかわからないけれど、もう少しだけやっぱり芝居の世界に居たいなあと。

趣味と両立できたらいいんだけど、私の脳みそは一度に何でもはできないのだ。なので今は、少しだけ比重を芝居に傾けたいなって。こんな気持ちは久々。