振り返り・人物と演者のこと②

長すぎたので分割。もうちょい軽めにいこう、軽めに。

 

萩原(ヒーロー)地脇慎也

ザ・ヒーロー!!

初演より更に頭悪く更にわかりにくくなった人。キャラは変わらないけどセリフはだいぶ変更したかも。

 

「ファンタステカを終えて」で、オミナエをやってほしい女優さんがいたから「ファンタステカ」を再演したと書いたけれど、再演するには越えねばならぬ障壁というかけっこう特殊な役があってそれがこの萩原くん。

わかりやすいヒーローなんだけど、これを作為的にやっちゃうとすごくいやらしくなるというか。アテガキだった初演と違って再演でやるにはあまりに難しい。本物のバカには演じられないだろうけどパッと見は本物のバカに見えたいという。そしてもちろん見た目のヒーローっぽさも大事。

そんな奴いねえよと思って初演で演じた子に連絡しようと思ったけど、確か本番が被ってるか何かで断念。

で、加茂克がダメ元でお声掛けしたのが地脇さん。

ここから40行ちょっとにわたって地脇さんのプロフィール写真を初めて観た時の衝撃と興奮と、実際に遭った時に見た煌めきと眩しさに震えたことと、一緒に芝居をつくりはじめてからその芝居の勘の良さとカッコよさと人柄の良さと声の良さと、それ以来これまでどれほど助けてもらったか、表でも裏でもどれだけ働き者であるか、献身的であるか、面倒見が良いか、面白い芝居をつくるために努力を惜しまないか、まっすぐで、人に優しく芝居には厳しく、愉快で穏やかで熱くて魅力的な人なのかを書いたのだけど削除した。下書き保存したのでいつか私がこの世を去る時に「そういえば今まで言わなかったけど…」という前置きで残していこう。

要約しても6行くらいあるな。

 

去年「ファンタステカ」の予定が「オーガッタジャ!」に変わったときは

…いや、この話も割愛。なんだなんだ書けることが全然無いじゃないか。でもほんと賞賛しか出てこなくて。ちょっと文章にすると気持ち悪くて。

本人にも、カッコいい!くらいは言うけど芝居とかについての褒め言葉ってほとんどかけたことないかもしれない。

っていうかさ、芝居がめちゃくちゃいいのにも関わらずまず見た目と人柄が良過ぎて芝居の話に辿り着けないんだよ、なかなか!もうそれどうにかして欲しい!褒めたいのに!

 

簡単に言うと私が今まで漫画でしか見たことないような猛烈にカッコいい理想の人を、現実の世界で演じてくれる人がいるなんてと感動したよって話を書きたかった。

 

ざっくり言うと地脇さんは私にとって、同じ環境で同じように育ってきた人、という感じが強い。実際は年齢が一緒ってだけで、やってきた芝居も環境もまるで違うのだけど。

私が好ましいと思う芝居を身につけている人。私が見たいものを全て自分の抽斗の中に持っている人。自分の身体の使い方を知っているので、きっちり身体でも表現できる人。過剰に演じずとも全てを伝えることができる人。

気が合うということも特に無いんだけど。この歳になって初めて会ったなんて信じられないくらい、それこそずーっと同じものを見て育ったとしか思えないくらいピタッとはまった芝居を見せてくれる。

すごく不思議なのだけど。役者の力量があるってことでは説明がつけられないほど、そういうものとは違うんじゃないかって次元でピタッとくる人って存在するんだなあと。繰り返し言うけどやはり同じ環境で一緒に育ってきたんじゃないかと錯覚してしまう。別に若いころから何年も一緒に芝居してきたからってピタッとハマるとは限らないんだけどね。うーん不思議体験。心地良い。

これ、言わんとしてること伝わるだろうか。

一番近いのは、若いころにお笑いコンビを組んでた相方のなみえちゃん。あの子とも、なんかピタッとハマるなあ不思議だなあって思ってた。彼女とも全然気が合わないというか好みとかも違ったんだけどね。舞台だと合うなって思って心地良かった。

まあなみえちゃんにせよ地脇さんにせよ、求められてるものを出してるだけですよって話なのかもしれないけど。

 

なんの話だっけ。

 

とにかく萩原くんは私にとってもヒーローだし、地脇さんはそのヒーローを現実の存在にしてくれた。ありがとう本当にありがとう。

萩原くんはセリフほんと少なくて後ろの方で好きにしてることが多いんだけど、いつ見てもキュートだった。何もわかってないみたいな顔して、でも人にどう思われようと関係なく、損得無しにみんなのことを…

 

割愛。

 

萩原くんのセリフはほぼ全部気に入ってるんだけど、セリフの無い場面がこれまた全般的に好きだったな。最後に屋上でビール飲みたいけど必死で我慢してるのとか(演出の位置からは死角だったこともあり本人が教えてくれるまで気付かなかったのが悔しい)、みんなの難しい話を理解しようとして一所懸命聞いてるのとか。

あ、そういえば衣装の話。萩原くんにジャージを着せたいけど予算の都合もあって私の着せたい型のジャージが全然いいのが見つからず。衣装探しながら私はなんでこんな世紀のハンサム、稀代のイケメンにこんなクソダサジャージを着せなきゃならないんだと心底憂鬱な気分になったもんよ。

が!いざ手に入れたクソダサジャージを身に着けた地脇さんはそれはそれはカッコ良くて!すげえ、全然イケてるジャージに見える!!!と感動した。

芝居が終わって洗って干したジャージは買った時のままクソダサだったんだけど。すごいな。魔法か。

ちなみに萩原くんをなんで萩原くんと呼ぶかというと、オミナエが萩原のことを萩原くんと呼んでるから。オミナエはたぶん萩原を若い子だと思っているんじゃないかな。実際はオミナエよりも年上で、売れないまま旬も過ぎて、今回テレビのヒーロー役が巡ってきたのも、役者が一人降板して代わりを探すも見つからず、最後の最後にようやく昔の知り合いヅテに萩原を思い出してくれた人がいて話が回ってきたという。それを、「俺ツイてるんだ」と言えちゃう人。とても健気というか切ない人。でも諦めなかったからヒーローになれたんだよね。

撮影の前日に砂漠を延々歩かされて、それなのに人のために水汲んで来ようと思って(萩原的にはみんなで考えた方がいい方法思いつきそうだからって言いそう)。誰にも理解されずボロボロになっても…

そしていざ屋上に戻ってきたら、涼しい顔で「朝から撮影だから帰って台本覚えないと」って笑顔で帰っていく人。

腐らず、まっすぐな人。やべーカッコいい。

愚者でしょうか。それでも最高にカッコイイヒーローに違いないです。

だから!それはもう地脇さんが演じてこそ!って話よ!

言っとくけど!萩原の中身が地脇さんじゃなかったら萩原はここまで萩原じゃなかったよ!!

 

葛見(ヒーローショーの戦闘員)溝端亮

初演は十九歳の子が演じてたので少年っぽさ全開だったけど、その少年っぽさをしっかり演じた二十五歳の溝端くんは偉い。

 

人づての人づてで紹介してもらったのだけど、劇場でその紹介してくださった人にお会いした時の第一声が

「いい役者でしょ!」

だったのがものすごく微笑ましかった。私も心からの言葉で、

「いい役者ですね!」

と答えたよ。

 

葛見くんはものすごくストレートで、ストレートな役ってやっぱりちょっと難しく感じる役者もいると思うのだけど、ものすごくストレートに演じてくれたのが良かった。いやキャスティング最高だってばよ。自画自賛じゃなく役者を褒めてるのよこれは。

書かれたまま、登場人物が言うセリフそのままを信じてやりきるって、戸惑う人もいるのだよね。これでいいのか?みたいに。でもシンプルに考えればそれはとても簡単なことで。溝端くんはシンプルに考えることができる子でした。簡単だったかどうかは別として。

あとやっぱりセリフの無い場面が多くて。これねー、難しいよねー。でも、自分で考えてやり切りましたよ。えらい。

溝端くんの一番いいところは、人の言ったことをシュッと捉える能力が高いところ。

大げさに重く受け止めるでもなく、聞き流すでもなく。自然に聞いて、大事なところを脳に残して素直に練習して身に着けていく。

いやーしんどいよ。若い時にちゃんとそれができていたら私ももっとイイ役者になれたんじゃないだろうか。

 

そうだ、萩原くんの名前って「京成スカイライダー」なんだけど、萩原くんが劇中で歌ってたのってまんまスカイライダーのオープニング曲なんだよね。本人はパクリじゃないですって言ってたけど思い切りパクリじゃん、っていう。

あと、葛見くんの戦闘員の衣装、これは私が迷いに迷った結果スカイライダーに出てくる悪の組織ネオショッカーのアリコマンドという戦闘員に似せたのだけど、なんで迷ったかというと知名度の高いショッカーに比べて胸に何の柄も無くて地味なのよ。ショッカーは骨みたいな白い飾りがあるけどアリコマンドにはそれが無いの。

ただスカイライダーなのだから戦闘員もそれに合わせるべきだろう、誰もわからなかったとしても。と肚を決めて、特徴となるベルトだけは頑張って、ネオショッカーのマークをモチーフに作ったのだけど…

お客様で!それをわかってくれた方がいて!!

ああ、良かった!わかってくれる人がいて良かった!!と。心底嬉しかったのだ。

 

で、葛見くんが「スカイライダーって仮面ライダーいましたよね」のセリフに対して「そうなの??」みたいな反応を見せてたってことは、葛見くんの衣装も萩原くんがデザインしてなんなら萩原くんが作ったのかなあと。そう思うととても可愛らしくて良い。

 

葛見くんの一番好きな場面はなんといっても最後の長台詞。

私は本番中ずっと袖であの場面を見ていたのだけど、毎回涙が出ちゃって困った。むしろ泣きたくて観てるまであった。

袖で自分の芝居観て泣いてる演出家ってどんだけおめでたいんだよって思うけど。あれは溝端くんの芝居が良かったのです。私のセリフは別にフツー。あと萩原くんと葛見くんの関係性をしっかり二人が演じてくれてたからこそよ。

 

 

おかしいな。短くサクッと書くつもりだったのに。

月刊リリカルチームの話はまた後日。今度こそサクッと。軽めに。