小説

上向き

気持ちが「上向いてる」のと「浮ついてる」のとでは随分違います。 やっぱり大地にしっかりと立ってこそ、しっかり空を見上げられるというもの。霞食って生きているように見えても、実際にはガツガツと生き物を喰らい、排泄して、性欲に翻弄され、己の生理に…

愛しの一冊

北村薫さんの「スキップ」。もう何度読み返したかわからないけれど、今回読んでて初めて泣けた。歳を取るにつれて感傷的になってる、という言い方は好きじゃない。歳とともにたくさんの経験を積んで感受性が研ぎ澄まされて、昔は感じられなかった心の機微ま…

この数日思い浮かんだこと。オボエガキ。

東野圭吾さんの素晴らしい作品のひとつ、『手紙』。映画化もされた。どうやってしたんだろうかと心配なので映画は観ていないけれど、原作は文句なしに素晴らしくて、悲しくて辛くて、心に重く残る。「犯罪者の家族は、自分が罪を犯してなくても世間から差別…

新潮文庫の扱い

私は神経質である。雑誌や書籍を買う時に、少しでも折り目や爪痕があると購入意欲が萎えてしまう。ひどい時は文庫本の帯のねじれすら気になる。購入後も、うっかり鞄の中でページの端を折っちゃったりすると、陰鬱な気分になる。そんな私が新潮文庫に関して…

熱烈ラブコール

以前の私にとって本といえば買う物、という認識があり、読みたい本は購入して自分の本棚に並べなければ気が済まなかったのだが、気がつくと本に対する所有欲が薄れていた。人から借りたり図書館で借りたりすれば充分、タイトルと作者と発行元さえ書き留めて…