熱烈ラブコール

以前の私にとって本といえば買う物、という認識があり、読みたい本は購入して自分の本棚に並べなければ気が済まなかったのだが、気がつくと本に対する所有欲が薄れていた。
人から借りたり図書館で借りたりすれば充分、タイトルと作者と発行元さえ書き留めておけばまたいつでも再会できるし、という考え方である。

だが、当然ながら図書館にあるのはハードカバーばかりで文庫本は僅かだ。本を読むとしたら私の場合たいてい電車に乗っている時なので、文庫本でないと都合が悪い。
そんな訳でやっぱり部屋にはゆっくりと文庫本が山を成していくのである。

まあ、出版業界も売り上げ部数が低下しているそうだから、文庫本くらいは買うべきかな。それも定価で。と思い直してみたり。

ところで私の好きな文庫ブランド第一位は、
ジャジャーン!新潮文庫である。

まず、使用している活字の書体が好きだ。これは大事。書体が肌に合わない本は読むのがちょいと苦痛である。
そして、私の読みたいと思う作家数タイトル数が他社よりも多い(数字のデータで比較した訳では無く、単に書店でうろうろした時の収獲割合に過ぎない)。
更に、紐状の栞がついてるのも親切で便利で心憎い。子供の頃あの栞をしゃぶってボサボサにしてた記憶がよみがえる。

しかし、私が新潮文庫を支持する一番の理由は何と言ってもデザイン、そして紙である。

カバーを外した時の表紙のデザイン、紙色、紙質!見て良し、撫でて良し、嗅いで良し。古書になってからがまた、実に味わい深い香りを醸す。
新潮文庫だけはカバーを外して本棚に並べたくなる。とは言えカバーも好きなんだ。ツルピカではなくさらっとした優しい紙の感じ。カバー表紙と背表紙の色づかい。好みだ。
また中身に使われている紙が、たまらなく良い風合いなのだ。めくりやすいし、漂白めいてない色味のおかげで落ち着いて物語に入り込める。
表紙をめくった一枚目、新刊案内のページ、奥付…ああ…うっとり。

きっと、こういうファンがたくさんいるから、ずうっとデザインを変えずにいてくれるんだろう。嬉しいことだ。
(と思ったが何年か前に変わったような…。また事実を確かめずに書いてしまったか?ホワイトバンド以降、恐怖症気味)

しかし何というか、印刷屋の娘らしいこだわりだなあ。