愛しの一冊
北村薫さんの「スキップ」。
もう何度読み返したかわからないけれど、今回読んでて初めて泣けた。
歳を取るにつれて感傷的になってる、という言い方は好きじゃない。
歳とともにたくさんの経験を積んで感受性が研ぎ澄まされて、昔は感じられなかった心の機微までも読み取った結果、涙が出る。と、思う。
しかし、どうしてこんなに透明感のある物語を書けるんだ、なんてステキなんだ。
そしてこの「スキップ」のような、もっと言えば「ターン」のような、あえて説明しないSF。
そう、これが私の作りたい世界のひとつでもあるんだろうなあ。
こっそり呟くけれど、今まで発条で作ったお話の中で、
「夢でした」
というつもりで書いたものはひとつも無い。
れっきとしたSFなのだ。
藤子不二雄先生ふうに言う、
「すこし(S)ふしぎ(F)な物語」
なのだ。
ただ、みんなで同時に一つの夢をみた、ということくらいなら、もしかしたらあるかもしれないけれど。