振り返り・人物と演者のこと③

八割ほど書いて完結してなかったものを今さらながら完結させてみる。振り返り日記、最終回。

 

須々木一朗(編集さん)畑中俊明

須々木が面白くてねえ…稽古の数だけガンガン良くなるの最高に面白い。あー楽しかった。

 

初演でも再演でも「河原先生を追いかける人」ということは変わらず。ただ、関係するキャラクターやら物語の構成が大幅に変わったのに伴い、再演の須々木は「切り口が変われば主人公」という存在に。

そもそも初演の須々木くんは京都に移住しちゃった役者とどうしても一緒に芝居がやりたくてつくった役で、ほんのちょい役だった。砂漠にも来ず最初と最後以外は街をさ迷ってる場面があるだけ。それもワンシーンだけ。

2020年に一度ファンタステカをやろうとした時に、畑中さんを須々木に想定したもののどう扱おうか決めかねていた。その時に書いた仮台本を読み返すとまったくもって影が薄くてキャラクターも薄くてこの先どうなるのか頭が痛いぜという感じだった。河原を追いかける役は絶対的に必要ではあったのだけど、その人を砂漠の場面にはめ込む作業がまるで捗らなかった。

それが昨年の「オーガッタジャ!」を終えてから一変した。候補の台本あれやこれや考えても畑中さんの役のアイディアはスイスイと浮かんできて。あれやって欲しいこれやって欲しい、あの作品ならこの役かな新作ならこんな役かな、ああどれも見たい!と。

そんなわけで現実を生きるしっかりした大人なのに夢見がちで、好きなもののために全て投げうっちゃうような熱血漢というステキな役になった。

役者って、演技力やらなにやら必要なものも大事なものもたくさんあるけど、突き詰めると「本人」が重要なんだなあと。

役者というのはそれまでどう生きてきたかが云々かんぬん、みたいな言葉もあるものね。

 

ここで一旦河原の話。

 

河原撫子(作家先生)伊織夏生

【初演】なんとなく書いた小説がたまたま売れたものの知名度は低い。締切りから逃げている。何も思い浮かばなくて人に八つ当たりしまくるけど追い詰められてひねり出した話を天才的だと須々木に絶賛される。が、やはり書きたくなくて逃げていく。

そんなに書きたくないならやめちまえよ。

この頃は天才的な才能がある人設定が自分的な流行りだったんだろうか。棚ぼた願望強めだったのかな…

 

【再演】書きたくて書きたくてしょうがなくて、でも人間関係が不器用なあまり、聞きたくない言葉や現実からは逃げてしまう人。

 

初演は私が演じた役。でも今回、須々木役を畑中さんがやるならばちゃんとした役者に河原をやって欲しいなあと思って11年ぶりにご出演いかがですかと伊織さんにお声がけした次第。で、ありがたくも伊織さんがやってくれることになった以上は書きたくない作家なんてやらせたくなくて、書きたくて書きたくてしょうがない人にした。しかし締め切り破りじゃないならどうして逃げるのか…聞きたくないことがある?雑誌の廃刊?…と、役者のイメージに引っ張られて膨らんでいったのが河原と須々木と藤袴、三人のものがたり。

いやあ、出演してもらっただけでなく物語の再構成のヒントになってもらいましたよ。得した。

言動は気持ち悪いけどよく見たら美人って感じにしたいんだよね、とオーダーした。だからちゃんと綺麗な顔してね、って。伊織さんはすぐ変な顔したがるので。本番はちゃんと気持ち悪くも可愛かったので良かった。

チエさんの思う「めんどくさい女」と自分が思う「めんどくさい女」に相違があるんですよねって言われてたけど聞き流してたので何が違うのかよくわかってない。

そのまんま、ありのままの伊織でいいんだよと言うと伊織がめんどくさいみたいになっちゃうし。別に伊織はめんどくさくはない。しかしたぶんこのあたりが既に相違点な気もしなくもない。

まあしかしちゃんと面白く可愛く生きてくれたので問題無し。

衣装決めるのにめちゃくちゃ苦労した。綺麗目だけどなんかちょっと変、みたいにしたかったがなかなか見つからず。最終的には私の趣味で決めたけど、上手いことコーディネートしてくれてよく似合ってた。できればそのまま伊織の普段着にして欲しかったくらい。

 

ここで先に藤袴の話をしておく。

 

 

藤袴菊之助(編集長)本多一生

初演には登場しなかった役。藤袴という名の緊張性勃起症候群のサラリーマンがいたけど今回の藤袴とは一切関係無し、名前だけ流用。ちなみに初演の藤袴の役割は、再演では桔梗田と須々木に振り分けられた。

これは単純に、本多さんが他の舞台が既に決まっていて前半あまり稽古に参加できないと聞いて、じゃあ幕間に自由にやってくれる役をやってもらおうかなーっていう安易な発想から。

 

結果、バッチリはまって安心して幕間をお任せできた。お客さまからの評判も良かった。が!もうこういうポジションの役はやらせたくない、やらせない!と決めた!

本多さんにはみんなと絡む役をやって欲しい。たとえ途中参加だろうが変わらずに。こちらの読みが甘くて今回は勿体ないことした。

でもなあ。役どころとしては申しぶんなかった。勿体ないけどやってもらって良かった。ぐぬぬ

ベースの台本を渡したらあとは好きにやってくれた。ネタ的な部分は演者本人がしっくりこないとイマイチになっちゃうものね。なので本多さんのようにガンガン自分でアイディア出してくれる人には自由めな役をやってもらうのが楽しい。シリアスな役もやってもらいたいんだけどなー。贅沢な悩み。

 

さて。

今回この三人は、なかなか全員揃うことがなく。というか意図的にそういうスケジュールのもと台本を書いたので、むしろ「この日は稽古お休みしてください」と私から言うことも多かった。こういうの初めてやったので実はちょい不安だった。20年以上の付き合いの間柄なのに稽古時間は一番少ないという状態。

正直に言うとこの形式にしたのは良くなかったかもしれないとすら思っていた。それが確か劇場入りの一週間くらい前か。

稽古すればするほど関係性が深まっていくのがわかるだけに、もっと充分に稽古時間をとっていれば…と、自分の判断を悔やんだ。

が!

お見事でございました。

何かが足りないということもなく。もうちょっとしたら飽きちゃうかもというギリギリラインくらいで上手いこと本番を迎えたのはホントすごい。

何に飽きるって、芝居に飽きるっていうか。なんていうか。関係性にマンネリを感じるというか。そういうこともあるんですねー。前に一回だけ経験したことある。

 

大学生の須々木と、高校生の河原と、大学のOBの藤袴との場面。そこから25年ほどの付き合いがあったんだよという関係性をしっかりつくってくれました。ナチュラルに。

 

まあ、そんなこんなで役者に助けられ。

私本人としては、しまった!ってことも多いし、うわー腕が鈍ってるなあと思うことも実はあるし、ピンとこないなあとか、なんかもっといいアイディアがある気がする!みたいなこともあるわけだけど。

決して満足することはないのだけど。出来上がってみたらなかなかいい作品に仕上がってるじゃん、となるのは役者の皆さんとスタッフの皆さんのおかげというわけで。

 

最後なんか雑にまとめてしまった。

おしまい。