清原なつのさん

清原なつのさんの漫画を最初に読んだのは確か小学校の低学年の頃。
忘れもしない「ABCは知ってても」だ。
純情なクラスメイトに性の知識を教え込む3人の女子高生たち、という話。
余計な正当性なんか持たせず、ただただ性に興味を持った少女達のリアルなやり取りを、オブラートに包まず描いてある。
掲載誌は『りぼん』(の別冊)。
最近の少女漫画は描写がどぎついなあと思ってたのだけど、あの頃のりぼんだってけっこう大人だったんだなと思う。
清原さんとか、言わずもがなの一条ゆかり先生とか。

何年か前にハヤカワの漫画文庫で出版された清原さんの作品集を何冊か買ったのだけど、やっぱり面白い。

現実を突きつけたり救いようがなかったり登場人物が未熟で利己的だったりという作品が多いのだけど、そして登場人物も作者本人も奇麗事をなるべく排除しようという意志があるように見受けられるのだけど、それが物凄く美しく見える。
汚い自分を確認しようとすればするほどその姿が美しく見えるというか。
反面、本当に本当に無垢で美しい人物が出て来たりもするのだけど、あまりに透明感があるものだから逆にリアルに見えてくるという不思議。

「子供が読んでもわかんないだろうなあ」というようなものもけっこう多い。『りぼん』だけじゃなく『ぶ〜け』にも書いてたようだけど、それにしたって読者層は比較的若かっただろうに。

良い作品ってものは漫画でも小説でも映画でも音楽でも、歳を取ってから触れると昔とは違う感想をもったりより深いものを感じ取ることができるものだけど、清原なつの作品は本当にそれが顕著だと思う。

小学生、中学生、高校生・・・少女時代にドキドキしながら読んだ清原さんの漫画は、今読むと涙が出るほど美しくて本質を突いていて面白い。

特にお気に入りなのは、『春の微熱』に収録されている「今6月の草木の中の」と「群青の日々」。
特に「今6月の・・・」は、誰しもが一度は味わったことがあるんじゃないかという、少女時代からの別れと切なさを感じさせる作品。
「群青の日々」は、大人になった今だからこそ主人公の気持ちがわかる!

どちらも清廉で、切なくて、青春時代を遥か過ぎ去った今は尚のこと胸に染みる良作だ。
こうしてみると『春の微熱』は比較的、綺麗でわかりやすい少女漫画なんじゃないかと。
あともうひとつ、同じく『春の微熱』の「優しい季節」という短編は、時代を感じるというか文学的な匂いが濃い。

清原なつのさん、オススメです。