バンクーバー・男子シングル2

そのテン君は、前半こそなかなかジャンプが決まらなかったものの、後半は調子を取り戻したようだった。まだ16歳。10年でも彼を観ることができるのかもしれないと思ったら、わくわくした。

ブレジナ君は、今シーズン初めてジャンプが抜けたりのミス。でも、そうでないとおかしい。挫折が必要ないことなんてこの世には存在しないし。だいたい挫折というには、今日の滑りはそれでもまだ充分ハイレベルだと思った。

パトリック・チャンは、根性で頑張った。何やらいろいろ言ったり言われたりの数年間だったけど、滑りと関係ないことは全部どうでも良くなるような良い滑りだった。4分30秒の間、9割9分、足元しか観ていなかった。それだけで面白くて、うわあスケートって、こんなにエッジを倒して滑ってるんだ!と思って、スケーターへの尊敬の念が高まった。
今日はなんなら、彼に全てを預けて引退してしまったジェフリー・バトルに説教したくなるくらい。でも、こうやって問答無用で次代を担わされたことで、スパルタ式に成長したのかもしれないなと考えたら、それも悪くなかったのかも。実際のところは分からないけれど。

そして第3グループで唯一のベテラン、ケビン・バンデルペレン選手。
今シーズンは調子の悪い時の方が多かったように見えるから、今日のケビンは悪くなかった気がする。
ベテラン選手が頑張っている姿は絶対若手に良い影響をもたらしてくれると思う。私も観ていて嬉しかった。若くないけど。あ、若くないからこそベテランの活躍が嬉しいのか。なるほど。

エヴァン・ライサチェクは、今日もノーミスだった。ノーミスがいかに難しいか、いかに特別なことなのか、ほんの僅かな時間ではあるけれど、今までフィギュアスケートを観てきて、私はそれだけはわかる。
昨日も今日もノーミスのライサチェクが、特別なごほうびを貰えるのは当たり前のことだ。演技を観終えて、ただただ凄いなあと思った。

織田くんは、健気で可愛くて、それでいて気迫のこもった良いスケーターになってきたんだなあと思った。靴ひもが切れるというアクシデント。それでも中断後もそれまで通りに演技していた。なんて強いんだろう。

高橋大輔のコーチが長光先生じゃなかったら、高橋はもしかしたら4回転に挑戦できなかったかもしれない。
モロゾフコーチが織田くんに4回転のオッケーを出さなかったのは、成功率がまだ低かったのだろうか。去年の世界選手権では、なんなら跳べる様になった瞬間を観たようなものだったのに。
まだ成功率は・・・低いんだろう。