最強の・・・!

DVDを観ました。
「最強の二人」。フランス映画です。

DVDのジャケットすらろくに見ず、どんな話かなのか前知識ゼロで観始めたのですが。
これは・・・もう文句無しです。面白かった。
人にお勧めしたい。騙されたと思ってまず観て欲しい。騙してないってことがわかると思うから。

始まってすぐに引き込まれる構成・演出の上手さ。素晴らしい掴みで、意味がわかるやいなや声を出して笑ってしまうプロローグ。
そこからすぐさま本編に入り、それも展開が早くてほおほおどうなるの?!と観ていくうちにあっという間にラストシーン。

ものっすごい派手な事件が起こったりするわけでもなく、あらすじを簡潔に文字におこしたならば、まあ昔からのよくある話です。王道パターンともいえるでしょう。

しかしながら、見せ方がとても新鮮なのです。ストーリーがどうのとかセリフがどうのとか演技がどうのとか、そういう細かいことに頭使わず感覚で観られるというか、人の気持ちを想像しながら観られる作品。つまり、ものすごく脚本が上手いんじゃないかなあ。そして行間を大事にした作品という感じ。
若手の監督さんらしく(男性二人らしい)少ーしだけ実験的なカメラワークや編集がちょこちょこ有り。でも、あくまで人を見せることに主眼がおかれているので演出がうるさくない。
洒落てるけど気取ってないの。で、しみじみしつつ容赦ない感じなの。すごく、すごく人間味のある作品。

1シーン1シーンこと細かに感想を書きたいのだけど、このブログを観てこの作品を知って、そして観てみようと思う人がもしいたならば、あまり先入観を抱かせるようなこと書きたくないなあとも思ったり。でも、そんなこと言ったら私がどう感じたかってことすら読まずに観て欲しいなあと思ったり。まあほどほどに。

自分自身としては、昔はてんでわからなかったフランス風ユーモアが肌に合うようになってたのにちょっと驚きました。
種類としてはブラックユーモアというやつですな。それいいの?みたいな際どい笑いで、それに対する返しがまた洒落てるの。いいなあ、フランス人のセンス。
BGMもいかにもフランス映画!って感じ。

演じてる役者さんがみんな魅力的。2時間足らずの映画なんだけど、一緒に長いこと過ごしたみたいに思えて、別れるのが辛くなるような、自然で濃密なキャラクター達。っつうか今調べたら本編113分だって。あっという間だったから体感時間的には90分無いくらい。集中して観てたってことだな。
イヴォンヌ好きだわ。最後、謳歌してたのがいい!フィリップの娘も憎たらしかったけど、後半で可愛くみえた。化粧が涙で落ちててさ。
端っこの登場人物たちもみーんな楽しくなれて、ハッピーだったわね。

主役の1人である黒人俳優がものっすごいカッコいい!そしてうんと若手なのかと思ったら、30半ばだと。見えない!コメディの人らしいんだけど、いやあ、とにかくステキだった。カッコ良かった。身体が大きくてねえ。すかっとする場面がたくさんあった。大きくて強いというのは良いことだ。

そして、もう1人の主役の俳優さん、大変そうだった!もうホント、大変でしょう!凄いな、役者って!!!
2人主役っぽいけど、思い返すと私はこのおじさまに感情移入して観てたっぽい。まったく境遇は違うのに。
本当におさえた芝居で、(手垢のついた言いまわしだけど)それが余計に雄弁に彼の気持ちを語っているという感じ。
感情移入してじんわりと悲しくなって、でも悲しいけどもそれだけじゃない。お涙ちょうだいではない。ただそこにこういう現実がありますよ、という淡々とした感じ。押しつけがましくないからこそ感情移入ができたのかもしれない。
そしてまた、悲しみは確実にあるのだけど、哀れな感じも漂うのだけど、それがさり気ないんだよね。
人生ってそうだよね。悲しみも喜びも、ものすごくものすごく個人的なもので、派手にどかーんとくることばっかりじゃないんだよね。強い感情と言うものは、本人の内へ内へ向かうものだよね。

そして、そんな訳で人間の悲しみはあれど、何はともあれ人生はやっぱり楽しくないとね!っていう、作品自体のテーマみたいなものが彼を包んでいるようで、だから決して悲劇ではないという。それが凄く良かった。

そんな映画です。

声出して笑えるところがたくさんあるのだけど、そのへんなもう好き好きなので。私は凄く好き。
細かいところだと移動する時に抱っこするのがお気に入り。ダンス踊ったり。
こんな屈強だとお世話するのも便利で良いだろうなあと思った。
プロローグは、最初は笑えたのに本編では同じ場面で泣けるという、これも見事だったなあ。

あ。
文句無しと書いたけれど、ひとつだけ難点を挙げるとしたら。
最後の最後、あの二人のショットは、あれはエンドロールの終わりに出すんではいけなかったんだろうか。と、思うのです。
あるいはあのタイミングだったとしても文字だけにするとか。

確かに実話に基づいた映画というのは冒頭で提示されていた(後で見たら映画のサイトにももちろん大々的に取り上げられていたし、確認してないけど予告編なんかでも強調されてるだろう)から、わかっていたことではあるけれど。
私は別にこの人たちの実際に遭ったエピソードを聞いて楽しみたいのではなく、映画を観て楽しみたかったのですよ。なのであの、本人の姿がどーんと出てくるのはちょっと余韻を邪魔された気になってしまいました。

だって、あの瞬間びっくりしたんだもの!
「あ、モロに本人登場させるんだ!」と。

あの二人のエピソードはそれはそれでドキュメンタリーで見れば間違いなく感動すると思うけど、映画のラストシーンにしなくても。あの二人が実在したからこそこの映画が生まれたというのは百も承知だけれども、それでも。映画という作品がそこにある以上は、それ自体が独立したものであって欲しいという、そういうただ私の個人的主義主張ではありますが。
せめて文字だけ、あるいはタイミングをずらすか・・・。
本編の最後の最後に姿を出すのは本編を演じた役者さんであって欲しかったのです。
だって、わたしは120分近いあの時間、「あのフィリップ」と「あのドリス」の人生を追っていたんだもの!

しかしまあ、面白かったです。この映画にめぐり合えて良かったです。

めぐり合わせって素晴らしい。あの二人は、お互いがめぐりあうことによって新たな人生がひらけたのよね。
なんつって。こんな安っぽいまとめしなくともいいじゃないかね。

おお、そしてほぼ一か月ぶりの日記更新でした。
いろいろ世の中や自分の身の周りの面倒なことに憤慨したり拗ねたりしてました。

フランス映画のDVDにはフランス映画の予告編がたくさん入ってて面白いです。面白そうな映画がたくさんありました。
ジャン・レノの三ツ星シェフのやつ観たい。恐ろしい殺し屋のジャン・レノしか知らないもんなあ。

あと、ハリウッド映画の「カルテット」。マギー・スミスの主演のやつ。これも観たい。
この映画のレビューを少しだけ目にしたんだけど、「ありがち」とか言ってる人がいてさ。
ホントに手法も描き方も何もかもが「ありがち」ならわかるけど、ただあらすじだけ抜き取ってそう言ってるんじゃねえだろうなという余計な喧嘩ごし的心構えができてしまった。
例えば貫井徳郎さんの「慟哭」みたいなさ。びっくりな話はそれは本当に感心するしドキドキするけれど、だからって唯一無二のストーリーにしか価値が無いとは私はまったく思わない。

目新しくないストーリーを、それをどうやって新鮮に表現するか、どんな風に見せるか、それはとても価値があり面白いことで、あらすじだけじゃない唯一無二の物語を作れると思うんだけど。

まあ、本当に工夫の無い「ありがち」な話も世の中には溢れていると思うけどね。