「ねぼすけさん」

何気なく行った飲み会で知り合った女優さんが出演するというので観に行ってきました、サンモールスタジオ。
バジリコFバジオという団体さんの「ねぼすけさん」というお芝居。

まず、やっぱり道に迷いました。
地図を見ながらでもナビに頼りながらでも人と一緒でも、必ず迷うサンモールスタジオ。
タイニイアリスとシアターブラッツは一発で行けるのに、その中間地点であるサンモールスタジオは何故か・・・なんだろう、結界でも張ってあるんだろうか?

新宿駅の南口から向かったのですが、近くまで行ってそこから10分くらい迷って、一回地下鉄の駅まで行ってそこからまたチャレンジして・・・お馴染みのさくら水産を発見した時はいつも涙が出そうなほどホッとします。
そんなことやってたもんだから到着したのは開演の5分前。
昨日の夜の回は大入り満員で客席も増席されたらしいです(あくまで推測)。その状態でギリギリの到着という有り様。ホントに申し訳ない。
そんななか、最後列の下手寄りというぽっかり空いてた席に入り込みました。私の好きなポジションです。劇場によって違いますが、サンモールスタジオで自由席の時のお気に入りポジションは下手側です。そういうの、ありません?私は割と奥へ奥へ詰めるのが好きです。なんだろう。自分が場内整理をする時に、遅れて来たお客さんの誘導をするのが苦手でよく苦労するもんだから、余所の芝居でも本能的に入口付近を空けておきたくなるのかもしれません。あと、ステージに近い劇場だと斜に観た方が全体が見られますしね。

さて、到着した時というのが前説の真っ最中だったのですが、なんと前説が人形劇だったんですよう!!
本当に初見の劇団さんだったんですが、びっくりしました。なんなんですか、ここは。人形劇劇団?
人形の精巧さ(何て形容したらいいんだろう。あんまり小奇麗じゃない感じで、愛嬌がある感じです。魂が入ってそうな、そう、勢いのある感じの人形)に驚いたのと、その操作の上手さに驚いたのと、喋りの上手さに驚きました。すごい!完全に掴まれました。

大きな公演だとあまり不手際に遭遇したことは無いのでフラットに観始められますが、小さな公演だとスタッフさんも臨時のお手伝いさんだったりするので、なかなかそこで余計な感情が出てくることもあります。でも、前説が面白かったり客入れや受付が上手だと、余計なことを考えずに作品を観始めることができるという訳です。
(まあ、私はちょっと開演前の状態についてうるさ過ぎるとは思いますけど。)
あ、座席が狭いのは全然平気です。ぎゅうぎゅう詰めでも問題なし。昨日も、隣の馬鹿カップルの男が彼女の肩にまわしてきた手が何度も私の肩に触れて不愉快だったけど、基本的には平気(あえてキツイ書き方をします。狭いんだからイチャイチャすんの我慢してっ!彼女以外の女の肌、しかも生肌なんて触りたくないでしょ、あーただって)。
ただ、シアターブラッツで客席半分桟敷という状態のところで、30センチサイズの座布団を敷き詰めてパンフレットを並べてあり、後は好きに座ってくださいという入れ方は頭にきた。
そんな狭いところなもんで、きちんと座る人もいれば2〜3枚の座布団のスペースを占有して座ってる人もいて。ぎゅうぎゅうのところとゆったりのところの差が激しくて、場内整理も無く放置で、その光景を見てたらホントあったまきたなあ。もうちょっと現実的に客席設定するか、無理を頼むならちゃんと誘導しろよ!という。
反面教師、反面教師。

さて、断言します。前説で掴む芝居は、本編も面白い。
逆はその限りではありませんが、前説のみが面白くて本編はクソ、ってとこはまず無い。
それはきっと、前説に気を配れるところには、ひとつの世界をきっちり創る覚悟があるからなのでしょう。視野を広くもって、お客さんの目線を忘れずに創れるからなのでしょう。

話は逸れましたが、そもそもどうしてこのお芝居を観に行ったかというと、まあ気まぐれだったんです。私はちっとも義理堅く無いので、人から誘われた芝居に行くか行かないかって、ホントに気分次第なのですよ。ダメですね。
で、今回のは何となく芝居を観に行きたい気分だったのに加えて、いただいたチラシがとっても・・・これは、人形制作した人が描いた絵なのでしょうかね。もう、とっても好きな感じだったのです。
ちなみにこういうチラシです↓
http://stage.corich.jp/img_stage/l/stage29867_1.jpg?1349137894

私、思ったんですけどね。芝居観るときゃ頭で考えちゃダメですね。
いや、考えたくなるようないい芝居はあるんですよ。
ただ、初めから頭使ってちゃダメだな、と。少なくとも私には向かないです、そういう観方は。
昨日の作品はSFでした。私はバリバリの文系です。本来はあまり縁がありませんのです。でも、前半のわーっと馬鹿馬鹿しい、これでもかという、反吐が出そうなほど明るいホームコメディというかサザエさんの世界、そういう波にのせられて観てるうちに核に迫っていき、途中めちゃ怖い展開になったりして、そして実はこの世界は・・・という感じで、ひとつひとつが区切られることなく流れるようにスムーズに展開していくので、己の感覚に身を委ねて観ることができました。私はそういう作品、とても好きです。
最後はどういうことだったんだろう、ということに対しての答は、自分のゆらゆらの感覚の中で曖昧に探るくらいが好きです。
芝居でも小説でも映画でもなんでも、人によって観方はそれぞれ違うと思いますが、私の場合はそんな感じです。
夢現舎だって帰ってきたゑびすだって、あの超絶美麗でドロドロして怖くて素敵な人間臭い世界がただ好きなんです。言葉で説明できる意味なんて別に欲しいと思わないのです。あと、語ると馬鹿が露呈するからあんまり語りたくないわ。
羽衣も好きだなあ。
「ねぼすけさん」は、もっと入りやすいところから始まってたけども。

セットもなあ。あの作りこんだ舞台セットが全然嫌味じゃなかった。私嫌いなんですよね、建て込みました、というセット。お金いくらかかったんだろうと考えちゃうし、あと、全然見てて楽しくない。
でも「ねぼすけさん」のセットはとーっても良かった。とにかく使い方が凄く上手だった。いや、使い勝手が良さそうだった。自分もこのセットで遊んで(=芝居して)みたかった。
偉そうな言い方だけど、よく考えられた作りで面白かったのです。そして、役者の動きに無理をきたすようなとこが無かったのがとっても良かった。
そう、わかった!建て込んだセットが何で嫌いかって、ただ本物を創りましたみたいな、芝居を面白くする気概が感じられないような、だったらテレビドラマでいいじゃん、って感じのところをいくつも見せられたからなんだ。工夫しろよ、そこに普通の部屋を創った意味があるのか?考えているのか?芝居をより面白くするための役に立っているのか?と。
手間も金もかけてないどころか工夫のひとつも無いベタッとした舞台が芝居をつまらなくさせてるところもあります。活かさない(活かせない)までも、せめて芝居を殺さないためのセットにしろや!その芝居に相応しいセットがあるだろうがよ!とかね。

なーんにも無い素舞台だろうと抽象舞台だろうと超リアリズムだろうと、学芸会みたいな様相だろうと、ゑびすみたいな超絶美麗なセットだろうと、いいものはいいんだ。何でもいいんだ。創りこんであっても何も無くても、どちらでもいいんだ。とにもかくにもまず芝居ありきで考えて欲しい!と。これは自分も肝に銘じとります。

役者の動きに無理が無かったのは、セットや脚本・演出が良かったのもそうだろうし、役者も良かったからかもしれない。いいなあ。総合的に観てとっても好きだよ、この作品。

内容は、なんと言って紹介していいか難しいのですが。とにかく次回公演も観てみないことにはどういう劇団さんなのか、なんともかんともわからない。
ただ、すごく、面白かった。
観に行ってよかった。気まぐれ起こして良かった。と、思います。

主役の女の子の声がすごく個性的で可愛かった。好きだなあ。
あと本編に猫が二匹出てきまして、そのうち一匹はこれまた人形だったんですが、それが可愛いのなんの。何ですか?人形劇劇団なんですか??上手いし面白かった!黒子さん、すげえ!役者さん達が操作してるみたいですね。
そして可愛いネタが全般に満載でした。

ちなみにお知らせくれた小名木美里さんは、非常に恵まれた肉体美の持ち主で、声にも力があって良い女優さんでした。
最初の方で歌って踊ってましたがとっても魅力的でした。
最近の若い子は骨がしっかりしてて欧米人みたいねえ・・・なんて言葉を言いたくなる感じの女優さんですな。

バジリコFバジオさんについて、いろいろ調べたい気もするけど次回観る時までそっとしておきたい気もする。
好きです。好きになっちゃいました。