怒涛の女子フィギュア

例えや慣用句としてではなく、本当に、まるで効果音を流されてるように自分の心臓がドクドクと音を立てているのに気付いて驚いた。
世界選手権女子シングルのフリー。まさに安藤選手の滑りが始まるというその時。

前日のショートで4位につけ、それがとても良かった。
これが安藤選手のジャンプか、と改めてその凄さを感じた。
こんなに魅きつけるスケートだったのか、とスケーティングにもため息が出た。
ショートの出番前からずっと、安藤選手はずいぶん落ち着いているように見えた。それは演技中も、演技が終わってからもずっと続き、なんというか…自分の中にみなぎる強い思いを、静かな意志な力でぎゅっと封じ込めているような。

これはもしや、フリーも良い演技をしてくれるんじゃないだろうか。
ファンの欲目だけではないと思う。
安藤選手の表情に、何か予感した人は、会場にもテレビの前にも、きっとたくさんいたことだろう。

あ、心臓の音。と気がそれた瞬間に音楽が始まり、そこからはただ安藤選手の滑りに身を委ねていた。

途中のニュース速報に思わず「どうでもいいわ」と突っ込みつつも、奇跡のように素敵なプログラムに、最後は泣きながら手を叩いていた。

会場のスタンディングオベーションが嬉しく、滑り終わってもまだ弦の張りつめた楽器のような安藤選手の様子に感動すら覚えた。

「スケートに自分の感情を出さない」

そう確かに宣言していたけれど、感情のコントロールがここまで見事にできるなんて信じられない。

素晴らしい。安藤美姫、最高だ!

感情を出さないで冷静に、かつ張り詰めた緊張の糸を解かずに滑った安藤選手の滑りの裏に、フィギュアスケートへ対しての今まで以上の愛と執念を感じて嬉しくなった。

理性まで押し殺すとは…(←「ガラスの仮面」の亜弓さんが、奇跡の人のオーディションを受けた時さながらに)

エキシビションボレロも、今まで観た中で1番伝わってきた。

かと思えばやっぱりあの魅力的な無防備な笑顔も時折見せてくれるんだ〜!!

ああ、もう、これは愛だっ!!