今年最後のフィギュアの感想

全日本選手権エキシビションを観た。

鈴木明子選手のタンゴは私にとって一生忘れられないプログラムの一つになると思う。
NHK杯の時はただ「何これ?凄いっ!」と衝撃を受けているうちに終わったのだが、今日はじっくりと眼に焼き付けるように観た。
フィギュアが好きと言っておきながら私はてんで技術的な善し悪しがわからなくて、ただ何となく心地良いとか、(いろんな意味で)鳥肌が立つとか、心に何の風も起きなかったとか、そんな感覚を頼りに観ているだけなのだが(ある意味、印象派)。
それにしても鈴木選手のタンゴには胸を揺さぶられ過ぎる。

これを技術だけで踊れる筈がないので(そうだとしたらそれはそれで天才だ)、本人が言ってたように本当に魂をこめた滑りだったということだろう。

フィギュアの実況解説では頻繁に表現力という言葉が使われる。あと、芸術性とか。でも鈴木選手を観てしまうと、真の表現力、芸術性って、こういうものだよなあと思う。
素顔は、日本人らしい親しみやすいかわいらしいお嬢さんにしか見えないのに、演技に入るやいなやあの妖艶な眼差し。それがちっとも浮いていない。ぞっとするようなイイ女に見える。いかにも、ってな誘うような仕草に全く違和感が無いなんて、これぞ演技力、表現力、芸術性だろう。

誰もがいつでもこんなに魂をこめて、人間を剥き出しにした演技ができるとは限らない。やろうと思ってできることなのかもわからない。でも、鈴木選手にはそれができるんじゃないかなあと思わずにいられない。実際、フリーの「黒い瞳」も、観ていてゾクゾクする。

魂を込めることをスポーツに求めるべきかは果たして疑問だが、でもダンスもスポーツとも言われるし、あれも恐ろしく高度な技術と肉体訓練、加えて高い精神性や演技力が必要な、そうでないと胸打つ作品にはならないという高度なパフォーマンスなので(ダンスの種類による?)、まあフィギュアとかダンスってスポーツと芸術の微妙な狭間にいるんだよな、やっぱり。

ともかく鈴木選手のタンゴは曲がタンゴである意味をちゃんと感じさせる振付と演技で、ショーのクライマックスにこそ相応しいプログラムだ。

村主選手のエキシビは、いつもちょっと苦手。でも彼女は「こーいうのがやりたい!」感を猛烈に感じさせるとこが最高だと思う。やりたい事をやる。素晴らしい。

安藤選手はいつか最高の…もっと土着的な、そんなボレロを滑れる日がきそうな人だなと思った。

小塚君のエキシビに今日もメロメロ。スケーティング上手いっ!