わくわくする

18時からの稽古、まず最初に何をするかと言うと、ウチの場合はみんなで輪になってストレッチである。
その最中、心臓が高鳴ってるのだ、私。

わくわくして、早くストレッチなんて終わらせて基礎練なんてすっとばして物語の中に入っていこうよ、この無味乾燥な稽古場にめくるめくストーリーと魅力的な人物達を飛び立たせようよ、と、ひどく気分が高揚するのだ。

これって、どうなんだい?

思い起こせば私は昔から「一番のファン」というスタンスでお芝居づくりに関わってきたっけなあ。
とにかく自分の見たいものを作りたい、役者にトキメキたい、登場人物に惚れ込みたい、照明にも音響にも衣裳にも舞台セットにも見惚れたい・聞き惚れたい、惚れ惚れしたい。そんな欲求が強くて、そんな風に出来上がった芝居だから、本番中も隙あらば照明さん音響さんの隣に忍び込んで、舞台を観ていたものなあ。

それって、どうなんだい?

ともあれ、いかに平々凡々な私といえど、私の感覚がまんまお客様の感覚になり得る訳ではないので、客観的に稽古を見て、私以外のお客様にも
「もう1回観たい!」
と思ってもらえるくらいの芝居を作らなければならない。

そんな訳で、稽古の2時間くらい前から高鳴っていた胸の鼓動は、基礎練が終わると急速に落ち着き始め、今度は私の右手が凄まじいスピードで膨大なダメ出しを書き記すこととなるのだ。

突然ですが、私、手元を見ないでメモを取ることにかけてはかなり自信があります。あと、スピードにも。
暗闇でも書けるし、向かいに座ってる人に読めるように、逆さまに書くのも得意。
でも、稽古場以外で使う機会ないなあ、この特技。

そんな訳で膨大なメモを見つつ、重箱の隅をつつくような、それでいて漠然とした4次元みたいな言葉でダメ出しをしまくってすっかり疲労困憊して稽古を終えるわけなのだが。
または、日によってはダメ出しを一言も役者に伝えず悶々として稽古を終えるわけなのだが。

だがしかし稽古中どんなにうがーっとなっても、次の稽古の2時間前には、いや、早い時には朝起きた時から、いや、もっと早い時にはその日の稽古が終わった直後から、またもやわくわくし始めるのだ。

私、幸せなのかもしれない。

あるいは、馬鹿なのかもしれない。