芝居語り

上演前の作品について語るのと同じくらいタブーな気がする、終わったばかりの作品についての語りですが、あまりにもあららと思ってしまったので、書いちゃおうかなと。

昨年の『パソドブレ』にしろ、今回の『アマガエル』にしろ、ちょっとだけ現実離れした展開があるお話なのですが、それについては作品中はおろか稽古場でもはっきりと答は出しておりませんで、まあ物凄くいい加減といえばいい加減なのですが、お客様もスタッフさんも役者陣も、なんなら私自身も明確な答はわからないようになっておりまして。
勿論いくつかの筋道を考えた上で、そのどれもが成立するようにはしてあるし、演出家として(自分の願望的なものは)一つ頭の中に確立している。でも、あくまでそれぞれが信じたいものを信じてくれればいいや、と思って作品を作っているわけなのですよ。

実際、現実に起こることなんて何が真実なのかわからないことの方が多いですし、科学で説明できることでも超常現象だと思いたいこともあれば、どう考えても理論的な説明がつかないことでも、気のせいだ偶然だ、と自分に言いきかせたくなることもありますし。

この作品を作る上で、私は言わば創造主なのですが、これが唯一の道ですよ、といってお話を見せるつもりは全く無いのです。

まあでも、お芝居を観てくださった方の感想を見ていて、その人が解釈した説明付けを、あたかも私が明示したストーリーのように信じられて、それを批判されてたりすると、うーん、と思ってしまいますね。まだまだ限定されやすい描き方になっていたのかな、と、自分の力不足に反省です。

理想としては、謎解きをするのも忘れてしまうくらい物語に没頭してしまうような、そんな世界を描きたいものです。で、「そういえばこれはどういうことだったんだろう?」と、ちょっとだけ思い返す、けど、大した問題じゃないやと思ってもらうくらいの。

ただひとつ言っておきたいことがあるのですが、私は週間少年ジャンプに長期連載されていた人気ギャグマンガの最終回にのけぞった一人であります。このオチは無いだろう、と非常にショックを受けました。ピンと来ない人も多いでしょうが、まあ、「え?」というオチだったんです。少なくとも私をはじめとする長年の読者達の一部にとっては。
そんな私の書いた脚本なのですから、当然・・・いや、やっぱりやめておきましょう。

この世には絶対な事も、絶対に無いことも、わずかばかりしかないのでしょうから。