父の心は燃えさかる炎のごとし

昨日、父から長文のメールがきました。
野村家と茂山家狂言の舞台をビデオで観て、それが芥川龍之介の「藪の中」を原作とした野村萬斎脚色のもので、すごくすごく面白かったんですって。
それで、我が家の封印された本棚の奥から芥川龍之介の短編集を引っ張り出してきて読みつつも、俺がもう少し若かったらこれをやりたいな、とか、脚本を書きたいな、なんて思ったりして、押し寄せる感動と興奮、燃えたぎって溢れる感情にまかせ、この衝撃を私や母やわかってくれそうな人達に伝えてる最中なんですって。

あたしゃ感動しましたよ。

子供の頃、
「千絵ちゃんがお芝居やってるのはお父さんの血だねー」とか、「本が好きなのはお母さんの血だねー」とか言われる度に
「違う!私は私の欲求につき従ってるだけだ!誰の影響も受けてはいない!」
なんて反発していましたが、まあ、その欲求自体もいろんな要素があって形成されてる訳で。

父と芝居との関係は未だによく知りませんが(父は印刷屋さんをやってます)、旭川で芝居を観る会の活動をしてたり、仕事で東京に来る度に、片時も無駄にすまじと憑かれたように劇場や美術館を巡ったりしてる姿を見てたら、私よりもよほど文化・芸術への欲求が強いことは明らかな訳で。
ああ、今だったら私の創る芝居も是非観に来て!と心から言える。タイニイアリスの桟敷席で私の芝居を観て欲しい!


母は、本とか音楽とか園芸とか虫とかが好きです。漫画も映画も大好きです。これはかなり影響を受けてる自覚があります。
顔面至上主義かってくらいハンサムに弱いのも、明らかに母の影響だと思われます。実家の母の部屋には美形有名人(主に西洋人)のポスターが貼ってあってそれはそれは夢のような空間となっています。
先日母の誕生日に、前からオススメしようと思っていた「坂道のアポロン」全巻(私の読み古したやつ)を送ったら、案の定すごく気に入ってくれまして、
「この漫画に出てくるジャズを集めたイメージサントラが出てるらしいんだけどまだ手に入るかなあ」なんて相談されました。

父と母、それぞれ趣味は違えどいろいろ好きなものがあって、それがぜーんぶ詰まってる私の家ってもの凄く良い環境だよなあと今は思います。
そういやあんまり考えたこと無かったけど、若かりし日の二人が意気投合して結婚にいたったのもわかる気がする。
いろいろな文化・芸術が手に届くところにぽろぽろあって、図鑑や文学全集も充実していて、それを手に取ってもっと知りたいもっと触れたい掘り下げたいと思ったならば、いくらでも後押ししてもらえる環境。

そんなところで育った私。
うーんもったいない。宝の持ち腐れ。豚に真珠。ああ、もっとピタッとくる言葉は無いかしら。


さて。
昨日もらった父からのメールを読んで、私は12月に観に行った「ゴジラ」を思い出しました。大橋泰彦さんのやつです。上演したのは離風霊船ではありませんでしたが。
しかし脚本が面白すぎて芝居が面白すぎて、それが嬉しくて悔しくて自分の不甲斐なさと演劇のパワーの強さにしびれて、客席でとめどなく涙を流したのを思い出しました。

衝撃を受けるって、いいよね。
人に衝撃を与えるって、凄いよね。
そういう人生を送っていきたい。