教生先生からの手紙

教育実習を終える先生にクラスのみんなが手紙を書いて、お別れの日に先生が一人一人にお返事をくれる。そんなあたたかな交流があったのは、あれは小学四年生の時だったか六年生だったか。

先生にもらったお手紙を教室で読むようなはしたない真似はせず、私は手紙を家に持って帰った。そうして自分の部屋で開いてみると、そこには、

「則末さんの姉は漫画家なんだって?!これからも勉強にスポーツに頑張ろう!」

彼は体育を専門とする先生だった。小、中と体育の成績が5段階評価で2(高校は10段階評価で3)だったような私の印象が薄いのは仕方なかろう。休み時間に校庭に遊びに行くことさえしなかった児童との思い出話なんて、そりゃ求めても無駄ってもんだ。
だからおそらく、私は当時、数名の慕ってた先生にだけ姉の話をしていたのだが、職員室でそういった先生から聞いたであろう姉の話を書くくらいしか話題がなかったのだろう。さりとて掘り下げるような話でもなし、その後はお定まりの台詞を続ける以外、彼に何ができただろうか。

まあ、それはさておき「さん」づけをする相手は私ではなく姉の方だろうと、何度も何度も私はその短い手紙を読み返したのだった。

あれ以来だろうか、私が、体育教師は馬鹿であるという概念を持つようになったのは。
君こそ勉強頑張ろう、である。