あれがイヤ!

手に持った傘の先を後ろに向けて、ぶんぶん振りながら道を行く人間が、世の中、意外なほど多い。私の見る限りでは若い娘と中年男が特に多いようだ。若い男やおばさん、老人だとあまり見かけないな。

「傘をそんな持ち方したら危ないですよ」
いつも、そう言いたくなりつつも実際には言えないでいる。
素直に聞いてくれるならいいが、聞いてくれない人だったらおそらく喧嘩になるだろう。私の性格から言って。だが、イマイチ喧嘩の方向がわからない。
考えてみると今まで、自分に後ろぐらい部分がある時や、我ながら理不尽な事言ってるなーと自覚してる時の方が、喧嘩のモチベーションが上がってた気がする。でなければ本当に我を忘れるくらい正義に燃え、憤りを感じてる時か。

残念ながら、傘でそこまで盛り上がれない。盛り上がりたいのはやまやまなのだが。

もうひとつ、電車の中でくちゃくちゃ音を立ててガムを噛んでる奴。あれ、非常に気に障る。圧倒的にサラリーマン(的な人)に多い。混んだ車内で逃げられない状況の中、耳元で盛大にくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃ………。
いつか私の理性のタガが外れて、殴り掛かる日が来てしまうかもしれないと少し怖れているのだが、しかしこれについても注意した事は一度も無い。何故だろう?これも自分の中での盛り上がりに欠けてるんだろうか?

あ、いま唐突にわかった。
ガムのくちゃくちゃ、言ってもキリが無いんだ。あまりに多いから、いちいち喧嘩してる程の元気が湧かないのだな、きっと。

それにしても、やっぱり傘の件は危なかろう。どうして自分で気付かないかなあ。