相方・2

しかし、ここに前述の「信頼」とか「絆」だとか言う言葉を持ち出すと、うーん、そういうんじゃなくてさあ…と言いたくなる。
そういうのとは何か違うんだよなあという漠然とした違和感。そんな類型的な表現で済むほど単純では無いのよねという思いもある。

コンビによって、プライベートでも一緒に遊ぶような仲良しコンビもいれば、仕事中以外は目も合わせないようなコンビもいる。
だが、それは必ずしも2人のパワーを左右する要因になるとは限らないと言う事に、私は遅ればせながら行き着いた。

事務所の意向で組む事になった相方を、初めは敬遠していた。
心底嫌いだと思ったこともある。
仲良くしなければと無理をしたこともある。
嫉妬を感じたこともあるし、畏怖を感じたこともある。
軽蔑したこともある。見下したこともある。
お金を借りたりおごってもらったり。
説教したり慰めたり。
下世話な話、人にはとても聞かせられないような話ができる相手。
逆に、相方にだけは話せないという事も、おそらく、ある。
上記の中には、過去形で書いてはいるけど、こりゃ現在進行形だな、と思うものも実はある。

「相方とは仲が良いですか?」との問いには本気で迷う。
良くは無い。でも、一般的な価値観で言うところの仲が悪いという間柄なら、とっくに破綻してるだろう…と考え答えに窮する。

そうか、仕事上のパートナーというのはかくもドライな関係であり、それ以上でもそれ以下でも無いのだなと、しみじみ思う。
その上で、そこに仲の良さが生まれる場合もあれば憎しみが生まれる場合もある。しかしそれは些末な問題である。

結局、私にとって相方はどんな存在かと改めて考えると、
恋人以外でディープキスができる相手は相方だけだなあ
なんて、どうでもいいことしか浮かばないんである。