バレンタイン・2

ともかくそんなこんなで好きな男には突発的な贈り物はあげても、イベント時の贈り物は無し、という人生を送っている最中である。
さて、ここからが本音の時間である。そんな私に、実はイベントプレゼント復活のきざしが見えた時期があった。相手はステキな男性で、それまで私がいいなと思ってきた男どもとはちょっとばかし違っていた。そんな折にやってきた、世間的にプレゼントをやり取りする日!私は熱を出すほど考えた。
何を贈ろう、何を贈ろう、何を贈ろう…
結末から言うと、私は彼に何も贈る事ができなかった。
彼が他の男と違っていた点、それは経済力であった。
私が今まで関わってきた相手といったら、貧乏学生、貧乏演劇青年、夢追いフリーター、借金持ちフリーター、そんなのばっかりだ。経済レベルで言ったらまあ、同等か私の方が上か(羽振りの良い時期が私にもあった)といった感じで、贈り物のレベル的にも何の問題も無かった。
そんな私に、自分よりもかなり上の生活レベルを持つ男性が何をもらえば喜ぶかなんて、完全に想像の範疇を超えていた。趣味のものは自分でお金をかけて良い物を揃えているようだし、かといってそんな彼が、今まで私が選んできたような面白グッズや手作りグッズを贈って喜んでくれるかと言うと、まったく自信が持てない。恋人ならある程度何をあげても喜んでくれるだろうが、こちらが気を引こうとしてる段階では下手は打てない。
そうして悩みに悩んだ末に、色気も糞も無い超・実用品を買ったのだが、あまりに色気が無い品である為、勇気が出ずに結局渡せなかったというお粗末な結果である。未だに家に置いてあるそれを見るにつけタメイキが出る。
同じ実用品でも予算さえあればもっと小洒落たコンパクトな物も買えたのだが、それはどう見ても粋とは対極にある巨大な電化製品である。
私は悟った。経済レベルが自分より上の男に恋するものじゃない、と。一般的な恋人同士の過ごし方は私には真似できない。かと言って己の中身だけで勝負できるような人間でも無い。そんな私には、やはり経済力が自分より下回る男が似合いだ。
ま、結局一番の敗因は私が見栄っ張りだという点にあるのだろうけれど。