今朝見た「怖い夢」の話

怖かったので吐き出します。ただただ夢の内容を書き綴るだけです。

場所はどうやら西荻窪あたりにあるらしい一軒家。住宅街の中の、薄暗く小さなその家は、発条ロールシアターの事務所であるようだ。
公道から玄関までの間には軽自動車を一台止められる程度のスペースと、ちょっとした植え込みがある。
玄関のドアを開けると8畳程度の板張りのダイニングキッチン。というか、端っこに流し台とガスコンロがあるだけの簡素な部屋。家具も何も無い。
一階の部屋はそれですべて。その部屋の右端、つまり玄関のドアを開けた正面には二階に続く階段がある。古い家屋によくある急で狭い階段が、一直線に二階に伸びている。
二階は・・・暗くてどうなってるか見えない。

杉浦直が、友人から借りたカメラを持って事務所にやってくる。そう、今は「スキッパーハイ」の稽古期間なのだ。杉浦は今回、カメラマンの役なのだ。
他の出演者たちも事務所にやってきて、一階の狭いスペースで打ち合わせをしたり台本読みをしたりしている。人がひしめきあってるのに何故か誰も二階に上がろうとはしない。
そうこうするうち誰かが、部屋の隅に置いてあるジュラルミン(風)のケースに気付いた。銀色がところどころ錆びたような色をしていて、一目で古いものだとわかる。
「あ、それカメラだよ。古道具屋にあったからケースと一緒に買って来た」
と加茂克が言う。どうやら稽古用のカメラを買ってあったらしい。
「でも直くんが本格的なの借りてきてくれたから、稽古でもそっちを使うといいよね。これ、ちょっとしょぼいんだよ」
確かにその古道具屋で買ってきたカメラが入ってるジュラルミンケースは、杉浦の借りてきたものの半分くらいの大きさしか無い。
「せっかくだから中を見てもいいですか?」
杉浦が気を使うように言ってケースを開けようとする。

と、ケースのロックを外そうとした瞬間、誰もいない筈の二階から何やら音がした。
私は二階の様子を見ようと階段の正面に立った。階段の途中あたりから先は真っ暗で、二階の様子はまったく見えない。が、じっと暗闇を見てるうちに、その真っ暗な二階から床板の軋む音が聞こえてきた。何だろうと闇を凝視しているが何も見えない。よく聞いていると音は徐々にこちらに向かってきて、そして階段を下りてくるような音に変わる。何の姿も見えずに音だけが・・・と私が意識した途端、足音に伴って人間のシルエットのようなものが暗闇にぼんやりと浮かび上がりはじめた。ような気がした。
私は何故かあまり怖がることも無く冷静に、
「このカメラは怪しいから捨てよう」
と言って、ジュラルミンケースを持って外に出ようとした。
すると加茂克が、
「それは実は欲しいと言う人がいるからその人にあげる約束をしてるんだ」
と言う。私は捨てるんでもあげるんでも何でもいいからとにかくそのケースをこの家の外に出そうと思い、玄関に向かった。
皆も何故か私の後について外に出ようとした。
その時、バキバキ!という音がした。振り返ると板張りの床に穴が開いている。
皆玄関の方に向かっていたので、穴の周りには誰もいない。どうして穴が開いたんだろうと近寄って行ってみると、その下はまるで地下室のような空間になっている。そしてその薄暗い地下に、人がうつぶせに倒れているのが見える。メンバーでは無い、誰かが。
その倒れてる人は呼吸をしているようで、上体が微かに上下している。そしてゆっくりと床に手をついて起き上がり始めた。

「出よう」と誰とも無く言い出し、逃げるように玄関から外に出た。
外に出ると駐車スペースに軽自動車が止まっており、見たことない中年男が二人、こっちにやって来ようとしていた。
「早くそれをくださいよ」
と二人はジュラルミンケースに手を伸ばしてくる。どうやらこの人達にこのカメラを渡す約束をしていたらしい。
が、私は何となく彼らに渡してはならない気がして、二人をかわして公道に出た。
そこにもう一組中年男の二人組がやってくる。
「あ、古道具屋さんだ」
と加茂克が言う。
古道具屋だというその二人組もジュラルミンケースに手を伸ばしてくる。
「それは危ないのでやっぱり返してもらいます」
と言うではないか。
が、私はその二人に渡すのも怖くなり、そのまま家の脇の道に逃げた。位置的には、家の階段の、壁を隔てたすぐ横あたりである。

それまで私ににじり寄ってきていた二組の中年男は、何故か突然足を止め、それ以上私に寄って来ようとはしない。他のメンバーや加茂克も、誰も動こうとはしない。
私の隣には加納和也だけが立っていて、
「渡しちゃった方がいいんじゃないですか?」と言っている。
それもそうかと思って私はあっさりと中年男達の方に向かおうとした。が、よくよく見ると、中年男達の視線は私と加納和也の後ろの、何も無い筈の空間に注がれている。
と気付いた瞬間に私の手に下げたジュラルミンケースがゴトゴトと揺れ始める。同時に全身鳥肌が立つような感覚に襲われ、私は絶対に後ろを振り向いちゃいけないー!と思い、何とか男たちにジュラルミンケースを渡そうとする。が、ジュラルミンケースの動きが激しくて、思うように前に進めない。

そんな状況の中で加納和也だけが、
「大丈夫ですか?」と、何事も無いかのようなのんきな顔で私を見て言った。
中年男のうちの一人が、
「彼、霊感ないねえ」
とつぶやいた。

そんな夢でした。
ちょっとオチがついちゃいましたみたいな結末だけど、ホントに怖かったです。
この西荻窪の一軒家というのは、今の家に引っ越す前に候補にあがってた格安物件だと思われます。
下見に行った時に、あまりに中がボロボロだったのと、あまりに陽当たりが悪いのとでやめといたのですが、今になって夢に出てくるとは。

まあ、こうして文字に起こしてみると怪談としてはいまいちだけど(この話だと、加茂克は黒幕っぽいよねえ。ホントに中身はカメラだったのかいな)、不意に見る夢としては充分すぎるくらいのホラーだったのです。
おお、怖い。