すてきな彼氏

「豚みてえにガツガツ食うことしか能の無いノロマ野郎。てめえみたいな何の価値もねえクズ目障りなんだよ。失せやがれ」
これはかつて私が当時の彼氏に吐いた言葉である。彼は優しく穏やかな人だった。仕事もできるしなかなかに聡明で、暖かい家庭でご両親に愛されて育った人だった。そんな彼が受けたこの罵倒。愛していた彼女から受けたこの雑言。
夜中に空腹を感じた私は眠っていた彼をたたき起こしメシの要求をした。彼は眠いながらも身を起こし台所へ。キムチチャーハン(確か)を作り二度寝する私を起こしにかかった。寝起きの悪い私も良い匂いに誘われて素直に起きたが、数口食べると満足してまた眠りに落ちた。彼の「もういいの?もう食べないの?」という言葉に「いらない」と返したのをうっすらと覚えている。
翌朝目を覚ました私はテーブルの上の空の皿を見てまたも彼をたたき起こした。キムチチャーハンは?と問うと、食べたよ、と答える彼。たちまち怒りのスイッチが入る私。私がおなか空いてるから作れと言った物をどうして食べるんだよ!そうして私の口から飛び出たのが冒頭の言葉である。