マッケンジーが番組を去る時に「負けた気はしない」と言ってたように(負け惜しみの意味ではない)、ラポーシャが結果発表前のインタビューで「二人とも勝者だわ」と言ってたように、自分が成長し、努力して何かを得ることができたのなら、それは勝ちか負けかで言ったら勝ちなのだと思う。
だって歌なんて、いや歌に限らずあらゆる芸術・表現なんて、己の中で何を見つけるか、それをどう表現するか、というだけのシンプルなものだもの。
そういえばトゥシューズに画びょうをいれる、という古典的な嫌がらせ表現があるけれど、実際のダンサーは「そんなことしても自分のダンスがうまくなるわけじゃなし」という感想を持つそうだ。
もちろん、隙あらばもぎとってみせるぜという弱肉強食の世界ではあるだろうし、手段を選ばずに奪い取る、という方針の人もいるだろう。なので画びょう派の人も絶対いないとは言わないけど、たぶんある程度踊れるダンサーならわざわざ労力かけてそんな無駄なことやらないと思われる。

話を戻そう。
ジェニファー・ロペスが言った言葉。
「あなたたちはコンテストで勝つために歌ってるわけじゃない」

『SWAN(有吉京子)』を思い出す。発表会で「せむしの仔馬」を踊った後に真澄がまたレッスンを再開しようとして、仲間に聞かれるの。「発表会は終わったのに何故?」って。で、真澄が「インスピレーションが湧いたからもう少し踊りたいの」と言う場面。
この漫画の、京極小夜子のセリフでもあったっけ?私たちはオーディションのために踊ってるのではないわ、みたいなの。

まあつまりそういうことだ。
なので、勝者・敗者と今更いうのもなんだけど…
しかし…


トレント、優勝おめでとう!!!!!
嬉しい!!!!!
嬉しいよ!!!!!トレント!!!!!!!

まさかあのラポーシャに勝つなんて!!!

私はトレントが大好きだったけど、いつだって一番心震えさせてくれるのはトレントだけど、最高に素晴らしくて面白いシンガーだと思うけど、ラポーシャの圧倒的存在感の前ではトレントも優勝はさすがに難しいかなって、いつも思っていたのだ。
それくらいラポーシャの完成度は凄かった。それはもう、予選の時から。
いつだって、どのステージだってラポーシャは凄くて、ハズしちゃったなってステージはまるで無くて(トレントもほとんど無かったけど私の感覚的には2回くらい「ん?」というのはあった)、いつでも既にプロの風格を持って完成度の高いステージを見せてくれた。
だもんで、トレントが誰より好きでナンバーワンだと思うけど、今回はラポーシャの優勝は納得だわよ、と、ずーっと思っていたのだ!!
が!!!
ああああおめでとううううう!!!!!

実は放送前に2度ほどネットの書き込みで結果を見てしまったことがあったのだ。
いずれもネットでの個人の書き込みだったので、
「これはガセネタかも…」と疑う方が強かった。
いや正確にはその情報が間違ってない可能性も考えるには考えたけど、万が一違ったときにショックなのであえて信じないようにしてたところもある。

それに、最後の決戦の時のトレントはやや精彩を欠いていたようにも見えたのだ。選曲のせいなのか、マイクやステージの勝手がそれまでと違ったからなのか、どうもどの歌も第一声がクリアじゃなくて、それはあえてやってるというよりは「どこか調子悪いのかな?」と思わせるような。
だから余計に、本当に最後の最後まで優勝はラポーシャかな、と思っていたのだ。

とは言え私の感覚はかなり鈍いから。
フィギュアスケートを観てる時にそれは顕著だ。
2009年のNHK杯で、「ああ私の贔屓の選手調子悪いや」と思いながら現地観戦するも、結果は
安藤美姫ちゃん、ブライアン・ジュベール、パン・トン組の生涯最大ごひいき選手たちが揃って優勝したのだ。ああ、あれも幸せだったなあ。
バンクーバーのパン・トンも、ダメだ…と思ってたら銀メダルだったし(FSは最高だと思ったけど)、とにかく自分の贔屓が最高の結果がもたらされる様子をイメージするのが下手なのだ。
なので不安のあまり、パフォーマンスの出来があまり良くないようにすら見えちゃう。

うわ、これって損じゃん。馬鹿だなあ。
要は結果にこだわり過ぎてるんだな、私は。だから不安で目や耳が曇るのだ。口では結果がすべてではないようなこと言ってるくせにいやらしい奴だ。


とにかく、最高の結果だった。トレント、本当におめでとう!!
そして、アメリカンアイドルの出身者が映像で言っていたけれど、これは始まりの第一歩であって、これからの道はまたよりいっそう厳しいものになるのだろう。
アメリカンアイドルでは日本にいる私には投票権もなく、ほんとにただ応援するのみだったけど、これからはファンとしてトレントにできる限りのことをしたいと思う。
手始めにitunesトレントの曲を買い漁り、youtubeめぐりだな。

けどあれだね。
こっちはただ好きで、ただその歌を聴くためにやるだけのことがトレントの応援につながるんだから、ファンってホント幸せだね。
ファンと表現者の関係って幸せだね。

ちなみにトレントに用意されたデビュー曲がこちら。

"Falling"
YouTube

えっ、何この曲…と思ったのだけど、翌日のフィナーレで歌った時はちょっと良い曲に聴こえた。
こちらがその、フィナーレでのパフォーマンス。
"Falling"
YouTube

優勝したぞ!わー!って感じの曲ではないけれど、上手いこと盛り上げた感じ。ああ、やっぱりトレントが好きだ。
結果発表の時に、またゴロゴロ転がってるし!もう!好き!
トレントの歌の最中にはしゃぐダルトンと、いつも通りニコニコしてるマッケンジーも可愛い。


そして私、この動画の最後、つまり番組のラストがすごく渋くて猛烈にかっこいいと思ったのだ。

大量の紙吹雪のなか歓喜にあふれる優勝者とそれを取り囲む人々とそれに注目する審査員や観客の目を背景に、司会のライアン・シークレストが静かに静かに、いつもの決まり文句を言うように幕を閉じるのだ。
たまらん。実に粋だ。ばか騒ぎして絶叫して終えるようなそんなバカげた演出ではなく、これこそが15年の歴史に幕をおろすのに相応しいと言える。
かっこいい。最高だ。
そしてさよならの後に一言、
「今のところはね」
と付け加えてる(らしい。どこかで拾い読みしただけ)。

いやあ、かっこいい。
ありがとう、アメリカンアイドル。

おめでとう、トレント・ハーモン!!