恋化粧/天上大風

映画を観てきた。
名画座ラピュタ阿佐ヶ谷の会員証更新時に招待券を2枚もらえるのだけど、毎年使いそびれたまま期限を迎え駆け込みで使う…という。
今年はもっとも駆け込みで、期限切れギリギリ最終日の最後の2上映を観てきた。入れて良かった。つーかここまで駆け込みで使うと貧乏くさい気もする。けど勿体ないんだもん。

ただいま池部良の特集月間ということで、この日観た2本とも池部良さん主演作品。

1本目は「恋化粧」(1955年・東宝本多猪四郎監督)
池部良さん演じるのは、ポンポン船の船長・リキヤ。復員して、戦争以来行方知れずの恋人を探してる。そんななかリキヤの会社の車が自動車泥棒の被害に遭い、リキヤは自動車泥棒を追い始めるのだが…
というざっくりしたあらすじ。

リキヤの傍には幼馴染の初子さん(売れっ子芸者の初菊。だっけ?名前うろ覚え)がいて、初子さんは学生時代からずっとリキヤが好きなのだけど相手にしてもらえないのだ。周囲の人には公認の仲だと思われているこの二人だけど、初子は遂に諦め、リキヤの恋人(自分の友人でもある園子)を探す手助けを始めるのだ。んもー、初子さん健気だ。
園子さんとはなんだかんだで再会できるのだけど、これがまたとっても思わせぶりと言うか煮え切らない感じで、そんでもって結局最終的には「リキヤさんは一人でも大丈夫。けどあの人には私がついていないと…」という理由で、非常に非常にダメな男と添い遂げる決心をしてしまうのだ。
いやあ、この男とくっついても多分一生苦労しますぜ?という感じ。けど園子さんは自分に酔いしれるタイプに見えるので、ダメ男の面倒みるほうが幸せなのかしら。
で、リキヤはバカみたいに恋敵のピンチに助けに入り「園ちゃんのためにこのことは黙っておくからお前は素知らぬ顔で園ちゃんのもとに帰りな」とか言っちゃうの。男の美学の王道ですな。
そんでもって傷心のリキヤは初子のもとへ戻り「いいのかい?俺は徹底的に女に振られた男だぜ」とか言って初子さんとくっつくのだ。
このセリフが興味深いよ。何?
もてない不甲斐ない男ですだ。おいらとくっつくと残り物とくっついた的なみっともねえ思いさせるかもしんねえけどいいんですかい。
的なこと?
よくわからんけど初子さん良かったね。もうだめだと思ってた片思いの相手と結ばれて。
いいじゃんリキヤもさ。働き者で強くて美人で愛情深くて身持ちもかたくていい女だよ、初子さん。妥協でもいいんだよ。寂しくてくっついた相手でも、いずれ愛情が生まれたら幸せになれるさ。もともと友情もあって気の合う相手だったんだからさ初子さんは。よかったよかった。

で、このかっこいいけどダメな男を演じていたのが小泉博さんという役者さんだったのだけど、なんと今さっき調べたら、小泉博さんこの日5/31の明け方(というか深夜。午前2時くらい)にお亡くなりになっていたのでした…。
無意識のお弔いをしたのね、私。けど訃報を知る前にこの映画を観られて良かったような気がするわ。
ダメな2枚目。ステキでした。

そういえば主題歌の作詞は岩谷時子さん(越路吹雪さんのマネージャーでもある)で、オープニング・クレジットにどどーんとお名前が。
つい最近、岩谷時子さんのメモリアルコンサートのチラシを入手したばかりだったので、印象に残った。

2本目は「天上大風」(1956年・東宝瑞穂春海監督)
地方からやってきた切れ者サラリーマンが会社を大改造する痛快ストーリー!という単純明快な映画かと思ったら、案外…。
友人である池部良さんを他社から強引に引っ張ってきて入社させちゃう2代目社長が、ちょっとフォローの仕様の無いほどダメ社長で、「血のつながりだけで会社を継がせるのって悪しきことなのね」と思わされてしまう。いやホント、何ひとついいとこなし。
社員の何とか子さんは何をとちくるったのかこの社長とくっついちゃって。何かメリットあるのかしら。どこを好きになったのかしら。美人なのに。
あまりのことに、絶対にこの女は専務の仕掛けた罠に違いないと思って今か今かと待ってたけど、遂にそんな事実の無いまま二人は愛の逃避行をしてしまうのだった。

二人してこの会社辞めちゃったけど、たぶん社長は他の仕事もまったく務まらないと思う。何とか子さんが養ってあげるのかな。たぶん一緒に暮らしても社長は我儘放題言って仕事も続かず(社長としても全然会社に行かず家でダラダラしてたくらいだから絶対無理)おうちでも家事のひとつもやらず(おうちでもお手伝いさんとか妹に何から何まで世話してもらってたもん。車も運転手つきだぜ?)、ただプライドだけは高いもんだから威張り散らしてふんぞり返って甘えてくるだけだと思う。
バカだな、何とか子さん。きっと何とか子さんは過去の何かしらの要因から自分に自信が持てなくなってしまい、今はただ誰かに必要とされるだけで嬉しいみたいな状態になってしまってるんだろうな。ああ、もったいない。会社はあなたを必要としていたよ。社長よりもっといい男が他にいるよ。
つーかあの社長、専務に毎月裏金せびってたよな。自分名義の貯金もろくに無いんじゃないの?母親はなんか息子のことどうでも良さそうだし(息子の友人と話してても娘の話ばっかりで息子の話題ほとんど出てこず)、世間体第一みたいな人だから(娘を外で働かせたくない、家柄が何より大事だから釣合の取れない相手との縁談なんてとんでもないとの発言有り)今後社長がのこのこ実家に顔出してもあんま助けてくれなさそうだし。
何とか子さん!早まったな!

つーか会社もさ。
社長の妹の高子お嬢さんが次の社長になって、でも悪事を働いてたとはいえ商才のある専務も追いだして、残ったのは専務の元部下の野心家のおっさんたちと、人はいいけど頼りない若造たちだけで、池部良は九州に帰っちゃうし。この会社は今後どうなるのだろう…。下手に規模の大きい会社なだけに、なんかあっという間にとんでもない負債を抱えてつぶれそう。

原作があるらしいのだけど、池部良が毎回あちこちでいろいろする楽しい連載小説なイメージ。知らないけど。

なんていろいろ突っ込みつつも(突っ込みつつだったからこそ?)楽しかった。
天上大風のほうは、ウエストがきゅっとなってスカートがふわっとなって、まさに素晴らしき50年代スタイルってなお洋服がいっぱい見られた。んもー、またこの手のお洋服が流行すればいいのに!
そして香川京子さんのウエスト細すぎ!!!バービー人形みたい!
女優さんがた皆さん、揃いも揃ってたっかいヒールのお靴で颯爽と歩いてらっしゃいました。いいなあいいなあ。