こら、ただでねっど!

「タダデネ!」終演しました。
毎度お馴染み津軽弁タイトルです。一応劇中でも2回ほど言ってたのですが、特に前面に押し出すことをしなかったので「タイトルの意味がわからない」というご感想もちらほらいただきました。わかってくれる人もいました。
まあ、タイトルの意味なんてさして問題ないですよ。

と言いつつ意味を書きますと、「ただごとじゃねえぞ!」ってな感じです。
生きるっていうのは本人にとって簡単じゃないんです。スペクタクルな出来事が起ころうと、そうじゃなかろうと。
嵐の中を漕ぎ出すのも、日々の日常を生きていくのも、同じくらい大変なのです。生きてるのか死んでるのかわかんない顔でぼやぼや流されるだけなら簡単かもしれませんけど。
まあ、そんなタイトルです。


登場人物の名前についても。
今回はごく単純に数字の一から八まで8人の登場人物に割り振っただけです。
元々は名前をつけるつもりが無く、男1〜5と女1〜3という表記にするつもりでした。
歴史に名を残すことも無い、とある人々、という意味合いで。

実際稽古の時にも私は
「1!」とか「3の人!」とか呼ぶことが多かったです。
ただ、現代の人たちは名前が無くても差し支えなかったのですが、過去の人たちはやはり名前で呼び合わないと話がわかりづらい。仕方ない、じゃあ名前付けるかあという。
で、男1→一ノ瀬、男2→二科、と名前に変換していったのです。過去の人たちは次吉(じきち)や珊助(さんすけ)、史朗(しろう)のように、数字の音だけ残して漢字を変えました。これはパンフレットにも載ってないので、単に役者にイメージを伝えるための手段としてですが。

私は作品タイトルとか人物の名前をつけるのが本当に下手です。センスが皆無です。作品タイトルなんて、もうずっと加茂克にお任せしています。
そして自分にとって作品の登場人物というのは道端の石ころのようなもので、一つ一つ違うけれど名前の付いていないもの、という風に捉えています。なので、名前はなんでもいいのです。ただ必要に迫られて名付けているのです。

でなかったら酒の名前とか秋の七草とか焼き物とか、毎回毎回そんな素敵に適当な名づけ方しませんてばよ。
今回の数字名前も、なんでもよかったんです。
ただ数字の持つ意味合いは考慮しましたので、一ノ瀬の名前が二科で良い、ということは決してありません。そして二科は二科であり、二階堂とか二見ではいけなかったのです。あれ?結構こだわってるな。

ちなみに私の演じた八甲田さんですが、歌舞伎で言うところの八枚目は元締め・座長を意味するそうです。
まあ、座長では無いんだけど。歌舞伎とも関係無いんだけど。そういう感じです。適当だなあ。


ずっと観てくださってるお客様に、賛否両論のギリギリ際どいところ、という評価をいただきました(自分はギリギリで賛だった、なんてあたたかい締めのお言葉も)。
とあるお客様からは、きっぱり駄作だと言われました。
逆に、すごく良かった!今までで一番面白かった!という声も聞きました。

いつだってそうなのです。ピンと来なかったなーという感想と、強烈に心を揺さぶられた!という感想を、同じ公演の同じ回でいただいたりするのです。

一言で言うと、私のホンは下手くそです。だから単純な好き嫌いという以上に、より評価が分かれるのだと思います。
ただ、自分としては今回はこれをやるぞ!という意図がばっちり貫ければそれは傑作なのです。
なので今回の「タダデネ!」も私にとっては傑作です。
下手より上手のほうがいいなあと思うので、課題は山積みなんですけど。

なんでこんな言い訳みたいなこと書くかってえと、某・口コミ演劇サイトに書かれてる感想を読んだお客様から物凄くフォローしていただいたのですよ。
で、そのフォローしてくださったお客様はどうやら「タダデネ!」をとても気に入ってくれたようなのです。
嬉しいです。気に入ってくれて。
私も経験がありますが、自分の気に入ってる作品のことはけなされたくないものです。

とはいえ数学のように答えが決まってる訳ではありませんから。自分の感性の中にのみ真実はあるのです、とその人に伝えたいのです。
「なんだこりゃ!」も、「素晴らしい!」も、真実の感想として有りがたく頂戴しますし、自分にとっての「良かった」と思う感想が他者の評価によって捻じ曲げられることは無いのです(逆もそう)。だから心痛めないでくださいね、と。

私が私の作品を信じられなかった時にのみ私の作品は駄作になり、私は観客と役者とスタッフを裏切ることになるのです。


つーか、こんな適当な名付け話なんて書いてたら「フォローして損した!」とか思われちゃうかしら。

ついでなのでその口コミサイトの感想というものについてフォローしときますと、それはまあどれも至極もっともなご意見だったのですよ。
精進いたします。


この度ご来場くださった皆様、まことにありがとうございました。
来てくださるだけで嬉しいのに差し入れまでいただいたり…本当に本当にありがとうございます。

いつも助けてくれるスタッフの皆さんと、一緒に駆け抜けた役者の面々にも、ただただ感謝です。面白い芝居をありがとうございます。

そして今回は発条史上、最もたくさんの人の協力を得ました。
加茂克のために舞台仕込みを手伝いに来てくださった4人のプロの大道具の皆さん、
夜中の搬入を手伝いに来てくれた役者の加納和也くん、
小道具づくりや受付手伝いに来てくださった女優の知念新さんと大城麻衣子さん、
いつもいつもフルで発条の公演を支えてくれる夢幻堂の主宰・後藤優也くん、
スーパーバイザー兼・トラック運転手であり今回はバラシまで手伝ってくれた花見卓哉、
そして快くバラシの手伝い(というか仕切り)に来てくれた古くからの仲間である福丸伯爵に、深く深く感謝いたします。
それともう一人、我々の芝居を愛してくれて、作品作りの手助けにと公演資金をカンパしてくださったHさんに心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました。


今回はどうしても御礼を言わねばということで、珍しくこんなこと書いてみました。
この布陣、本当に…ただでねえ!
本当に本当にありがとうございました。


こら、ただでねっど!
でも、そんなの承知で私は我々は漕ぎ出すのです。