お互いがお互いにとって一番のライバルであり無二の親友であるといってもいいのではないだろうか

私にとって牛乳と豆乳ってどういう存在だろうと考えてみたら、
それは野菜でいうところのほうれん草とアスパラガスだろうなと思った。
どちらも大好きで、どちらか片方なんて選べない。両方にそれぞれいいところがある。
美味しくて、栄養があって、そしてそれぞれがお互いにどこか似ている。
色とか。
でも、個々の魅力は全然違うような。

牛乳も豆乳も、そのまま飲むのが好きだ。豆乳は無調整の、大豆でございますという味のが一番好きだ。牛乳も無調整のが好きだ。
シチューを作る時、牛乳を投入するか豆乳を投入するかいつも迷う。
あるいは根菜と味噌を使った汁物。ここに豆乳もしくは牛乳を入れたら…と妄想するとハアハアしてしまう。

一方、ほうれん草とアスパラガス。
ほうれん草は、おひたしが一番好き。アスパラは、茹でてマヨネーズつけたのが一番好き。
私が日頃一番親しくしている野菜はもやしなのだけど、ほうれん草とアスパラガスは、もし許されるなら毎日どんぶりいっぱい食べたいくらい好きだ。
ブロッコリーもいいセンいってる。かなり好き。
しかしブロッコリーとアスパラガスなら僅差でアスパラガスが勝つ。気がする。
そしてほうれん草はそもそもブロッコリーとは土壌が違うので競うことはできない。
何を基準にしてるのか自分でも説明不能だけどそんな感じなのだ。

ともかく、牛乳と豆乳はほうれん草とアスパラガスなんである。
牛乳や豆乳を、料理に使おうと手に取った時に思わずそのまま飲みきってしまう感じは、
ほうれん草やアスパラガスを茹でて、さて切ろうというその時に切る端から口に運んでしまって包丁握りしめながら完食してしまい食卓から一品おかずが減る、というところと共通している。
味付けなんていらないんだ、ホントは。醤油もマヨネーズもホントはいらない。あの青い味だけで充分なんだ。
この両雄と並べるにはそぐわないと思って言及しないでいたけれど、実はきゅうりもこれに近いところがある。
きゅうりを洗ってまな板の上に載せて切って、切ったきゅうり達を小鉢に運ぶ前に自分の口に運んでしまうことがある。というかいつもそう。
もしくは、やはり包丁を握りながらもそのまま丸ごとのきゅうりを口に持って行き、おもむろに端っこを噛みちぎったらばもう引き返せない。きゅうりの丸かじりってホント上手いんだ。
そんな経験を今まで何度しただろう。というか割といつもそう。

さてこれを料理で例えてみよう。
なんだろう。カレーと麻婆豆腐だろうか。
いや、カレーは全てを超越して殿堂入りしているからこんなところで名前を出すべきで無いし、さしもの麻婆豆腐もカレーに並べられては分が悪いどころか逃げていってしまうだろう。
麻婆豆腐でもそうなのだから、他の料理ではとても太刀打ちできない。まさにランクが違う。

餃子と麻婆豆腐、だろうか。あるいは麻婆豆腐と餃子、だろうか。
ちなみに辛い物が好きな訳ではないので、カレーも麻婆豆腐も辛さ控えめだ。餃子のタレは酢醤油でラー油は無し。
しかしこう並べてみるとどうもピンとこない。このふたつは違う。このふたつは例えば、どちらかが急病の時に人知れず入れ替わることでお互いを助け合うような、双方が双方の影武者のような、双子のような、魂の片割れのような、そんな存在であるといったほうがしっくりくる。両者はあまりに似過ぎている。

それならば寿司と麻婆豆腐というのはどうだろう。
いや、寿司は違う。寿司はあれは寿司と名乗っているが実際に勝負するのはネタだ。具材の戦いだ(シャリを軽んじてる訳では決してない)。
例えばサーモンもマグロも一貫でかなりの戦力を持つ。ホタテなんて出てきた日には相手は闘わずして白旗を上げるだろうし、、えんがわとウニが出てきたらもはやそこに勝負は成り立たない。えんがわとウニは全てを焼きつくし、世界の全てを手中におさめてしまうだろう。
むしろえんがわとウニ、という並べ方を出来る気もするけれど、これも違う。
牛乳・豆乳、ほうれん草・アスパラガスのような平和な並べ方をするには無理がある。
ロシアとアメリカみたいに、なんか並べると大変なことになりそうな気がするというか。
何というかえんがわとウニにはもうちょっと高いところで余裕でいて欲しい感じである。

困った。料理で例えることはできないのだろうか、と思ったところで頭に浮かんだものがある。
揚げ出し豆腐!こいつだ!この、抗えない魅惑、それでいて殿堂入りみたいな華々しい世界や、無敵の戦闘力みたいな物騒な話とは縁が無いこの感じ!だけど私にとっては永遠に恋い焦がれるステキなあなた!
揚げ出し豆腐が出たなら後は簡単だ。その対となるものを探せばいい。
案の定、すぐに思いついた。

揚げ出し豆腐と対になるもの、それはかき揚げだ。
ごぼう、にんじん、玉ねぎ、そういった土の中で育ったものたちを、あえてはかなく頼りなくそれでいて歯ごたえしっかり切り刻んだやつを、無慈悲にもどちゃっと衣にからめて揚げたかき揚げ。
エビ?そんな花形は入ってなくて構わない。イカ?ふん、不要だ。エビもイカも大好きだけど、かき揚げにどうしても必要なのは、決して彼らではない。

大葉の天ぷらも大好きだけど、一生涯ともにする伴侶に選ぶかって基準で言ったらやっぱり揚げ出し豆腐とかき揚げには一歩及ばずという感じだ。
揚げ出し豆腐とかき揚げ。これだ、スーパーの総菜売り場で20分くらい迷う感じ。
なんかあんまりピンとこない気もするけどそろそろ話を締めたいのでこれでいいかという妥協もありつつ。
あ、揚げつながりなのか、今気づいた。


だいたい、料理はやっぱり無理よ。いろいろな食材が使われてて調理法もいろいろなのに、素材を比べるように簡単には思い浮かばないわよ。

あー、みかん食べたい。