パソドブレ終演

タイトル・・・おいっ。
しれっと「終演」なんつってますが、肝心の公演直前から本番中の日記更新ゼロでした。当日記を読んでくださってる、数少ないステキな読者の皆様ごめんなさい。

今回は再演なのでベースとなる台本があった訳です。それがどうしてこうもバタバタだったのか。
まあ、脚本をいじれるという自由が、逆に私を縛り付けていたような気がしなくもなく。
しかし、とは言えやはり私は演出が好きだわと再認識できたことや、役者の楽しさってこれだよなあと久しぶりに思えたことなど、個人的にはすごく充実した公演でした。

そう、役者の楽しさ。
それは、役を深めること、味付けをすること、想像力という翼によってどこまでも飛翔させること(←なんだ、このポエム調の表現は)に尽きるでしょう。
しかしながら実はそれって、演出の場所から客観的に役者を見てて思う事はあっても、実際にその楽しさを自分が感じることと言うのは久しくありませんでした。
自分の未熟さもさることながら、書いてる段階、作ってる段階から既に自分で自分の芝居に演出を入れてるという理由も大きかったんじゃないかと分析しています。
あらかじめ演出の手が入った役を、あとは何の制約も無しに自分勝手好き勝手に演じる、というのも自由で楽しくはあったのですが、それは役者の仕事ではないと思っていました。

今回演じた「夢と現のハザマを彷徨う婆さん」の役は認知症というデリケートな問題をはらんだ役なのでどういう見せ方をするか演出としては迷っていたのですが、いざ演じてみると役を膨らませる作業というのが自然と生まれました。理屈や理論や演出目線からではなく、他の役者と合わせているうちに湧き上がってくるもの。とはいえ稽古終盤から遅まきながらようやくといったところですが。
演出の客観目線ではわからない大胆さも生まれました。私は不幸であり幸せである1人の年老いた人間を演じました。とても面白く、しかも相手役にも恵まれました。
劇中で主に絡む二人の役者、主人公・田中と、隣人の信楽役の二人。とてもとても面白い役者です。
ああ、稽古場であの時間を演出の場所じゃなく彼らの隣でもっともっと過ごしたかった!

この世に「惚け老人」という名の者はいません。惚けても、私は私なのです。楽しいことも不愉快なこともあり、幸せも不幸も併せ持っているのです。
介護の観点からみる周囲の苦労は知りません。私の役者としての仕事は、周囲の人間の苦労をおもんばかることでは無く、当の本人を演じることなのですから。他の事は演出家が考えればいいことだし、演出家の則末さんはそんなことまでわざわざ口に出して語らないでしょう。

とにかく私は終演してからも婆さんの日常を夢想して、もっともっといろんな発見や遊びが入れられただろう。と、悔しい気持ちにもなっています。
と同時に、きっと次回演じる役には初めからそれが入れられるだろうと思うと楽しみでもあります。それこそ、どんなちょっとした役でも。

自分が演出する芝居で、純粋に役者としての楽しさを感じたのはもしかしたら初めてかもしれません。
ああ、やっぱり芝居って面白いなあ。

ということで悔いも含めて役者としては大満足の芝居でした。
演出・脚本としては、まあどの公演だって満足するってことはまず無いのですが、それでも今の自分がやりたいこととやるべきことは全てやったので、実力通りの仕上がりといったところでしょうか。
満足ではないけど納得しています。
私は私の芝居の一番のファンでもあるので、賛辞と酷評を心の中で自分に送っています。

ひとつだけ。
不安定なものを安定させる、ということがやはりどうにも上手くいかなかったのが反省点です。
そのカギとなるのは日々の稽古の積み重ねなのかもしれないし、その当日その瞬間の持って行き方なのかもしれないし。未だにどうすれば手に入るのか模索中ではありますが。
くっそー、と思いつつも、いやいやこれは全て私の責任だと歯ぎしりしていたりします。
しかしまあ今までもこれからも役者に対して、できることや得意なことだけやってもらう、ということだけは絶対にしないだろうと思います。そんなの当たり前なんですが。
自分だって相手だって、苦労があってこそその先に面白さがあると思うし、その面白さはそのまま客席に伝わるとも思っていますので。

稽古期間の長さについても今回は少しいつもと変えてみたりしましたが、今後もいろいろ試行錯誤しつつやっていきたいと思っています。

今後も・・・
そう!今回第10回公演と銘打ったことで、実はなんだか私の中でのひと区切り感が強まってしまい、以降の公演について何ら具体的なことを考える気にならなかったのです。もちろんこれで辞める気はありませんでしたが、次はいつになるだろうなんて少し他人事のように考えていました。

しかしまあ、やりたいことは尽きないのです。
いつの間にか頭を巡るのは、次回はこうしたい、こんな話をやりたい、こんなセットにしたい、こういう稽古をしたい、今度はあの役者とやりたい・・・
欲望は果てることなく、煩悩のカタマリである私の欲求は尽きることなく、また次回作のことを考えているのであります。

まあ考えてみりゃたったの10回程度で満足する訳ゃないのです。まだたったの5年です。
やりたいことがある限り、何がどうなろうとただやるしかないのです。


そんな訳で「パソドブレ」終演いたしました。
足を運んでくださったお客様、応援・手助けしてくださった皆様、お手伝いに来てくれた皆様、そしてスタッフの皆さんと、出演してくれた役者陣に、深く深く感謝しております。
ありがとうございました。

今後もお付き合いいただけますと幸いです。