その場所と舞台

なんか最近芝居の話ばっかり書いてる気がする!いや、全然悪くないんだけど!

この場所でやるからこその芝居、っていうのが好きです。
カフェとかレストランとかバーとか、そういう場所だからこその、その場所を活かした芝居は観ててワクワクしますし、自分もやりたいです。
特にバーは、飲みながら観られるのがまた良いですねえ。
ライブハウスも好きです。が、少し前にやった時は客席と舞台の段差の無さをクリアできず、最前列以外のお客様はみんな見え辛い、という失敗をしてしまったことがあります。初歩の初歩と言うか、最初に向き合うべき問題だったのに、大反省です。

実験的な舞台が大好きです。観づらくて落ち着かなくても世界観がびしっばしっと決まっていると、その落ち着かなさすら効果的になる気がします。

私は観に行けなかったのですが、進藤則夫さん(「帰ってきたゑびす」主宰)が秋田で創った舞台は、建物の中の吹き抜けの空間が芝居スペースになっていて、舞台奥の壁は一面ガラスになっており、そのガラスの向こうに現れる本物の夕焼け空を演出に取り入れるという、もう聞いただけでゾクゾクするような舞台美術だったそうです。天然の舞台美術!すごい!
帰ってきたゑびすの舞台美術は、いつもいつも、とにかく美しいです。特に中村一海さんという方の美術は最高にステキです。自分もその舞台に立ちたくなるような、いや客席でずーっと観ていたくなるような。こんな美しいセットは初めて観る・・・!といつも思わされます。素晴らしいです。
他には、「夢現舎」の舞台美術も素晴らしかったです。知り合いが辞めてしまってからは観に行ってないのですが、お金をかけずに手間をかけ、アイディアとセンスと一貫した世界観とで魅了する美術です。
見た目が似ている訳ではないのですが、大事にしている部分は「帰ってきたゑびす」と共通しているかもしれません。小道具も全て面白いです。今は関わっているかどうかわかりませんが、ここは山下昇平さんという人が美術をやっていまして、この人のセンスが抜群なのです。美しくておかしみがあって愛らしさもあり、そして生々しさもあり、というそういうものを創る方です。色使いや素材選びも堪らない。一度、お願いして廃棄する予定の小道具をひとついただいたことがあります。手に取ると、「あ、こんな簡単なものだったのか」とあっけなく種がわかるところが余計に凄いです。舞台の上では本当に特別の、夢か現か・・・という不思議に神秘的なオブジェだったのに!と。

あとは、「FUKAI PRODUCE羽衣」の、こまばアゴラを全面段ボール敷きにして、その上に演出の糸井さんが絵を描きまくったセット。もうセットというか、客席も含めたその空間全てがアートみたいな。あれは圧巻でした。アゴラの公演の美術はどれも素晴らしかった。今はもっともっと大きな劇場でやってるのでああいうのはもうできない(というかやらない)でしょうが、あの頃の美術が本当に好きでした。とは言え今は今で相変わらずセンスが良くて素敵なセットだなあと思うのですが。

この3団体が、私が主に舞台美術の面で猛烈に影響を受けたところです。
3団体とも青のイメージがあります。実際はそればかりではないのですが。
私、青が好きなんだなあ。

発条ロールシアターの美術では、そういえば青はあまり使っていません。
発条の青は、照明でよく使われています。青と一言で言っても本当にいろんな色があって、私はうちの照明をお願いしてる廣瀬浩司さんのつくる青が本当に美しくて好きです。深い青、明るい青、海の底の青、夜明けの青、快晴の空の青、宇宙の果ての青。
大好きです。

舞台美術を愛しているのが見える芝居が好きです。
その空間を活かした物語が好きです。
そして、どんな場所も芝居空間に成り得るからこそ、劇場を使うということにも特別な意味があると思っています。
青空演劇もテント芝居も稽古場を使ったアトリエ公演もどれも好きですが、私は今のところ、タイニイアリスという劇場で創る芝居に取り憑かれています。
まだある、まだ何かがある、そんな風に思って毎回挑んでいます。