セルフ羞恥プレイ

押入れの中の書類を漁ってたら、懐かしい台本を見つけました。
「STAR★〜俺のラブソング」
はい、これは何かといいますと、昔の劇団にいた頃、お笑いライブの企画でショートムービーを作ったのですよ。それの台本です。はい、監督も脚本もカメラも編集も私です。企画(言いだしっぺ)も私です。完全に私のオナニーです。

バンドマンが恋に友情に迷いながらスターを目指す的なお話で、まあ、趣旨としては芸人が芝居してるところを見せたいってとこが1番で、内容はベタベタのコテコテのダサダサの、どこかで昔見た漫画とかドラマとかみたいな、というコンセプトで作りました。
例えば、竹本(主役の名前。演じる芸人の芸名まんま)が、あけび(ヒロインの名前。演じる女装芸人の芸名まんま)に言い寄る男がいるのを知って嫉妬するんだけど、あけびが後ろから手を握って、
「あけびが好きなのは、心配性の誰かさん」
と言って背中に頭をコツン、とか。
その後、竹本の部屋で2人でラーメンを食べながら、
「あけび、竹本くんの作ったラーメン、だあい好き」
と喜ぶあけびに、
「俺が好きなのは、食いしん坊の誰かさん」
と言って竹本がほっぺをちょんとつつくとか、まあそういうノリですわ。

バンドメンバーの名前が凄いよ!
主人公の竹本は、バンドの時の名前は「バンブー」。もちろん主役なのでギターね!
リーダーはベースの「ルシファー」
ボーカルが「レイラ」。これは漫画の『NANA』からなんだけど、名前はレイラなのにキャラ設定はナナ。
汚い手を使ってでも売れようぜ、と言ってバンブーとやりあうのがドラムの「黒木」。って、これだけ芸人の名前まんまだわ何故か。
で、バンドの名前が「クレイジー黒木バンド」。何でリーダーでも無いのにこいつの名前が入ってるのか。誰も触れてなかったけど、ここは笑いどころですか?

竹本と黒木の青春の殴り合いとか。
その後の仲直りのシーンで黒木が「くさいセリフは無しだぜ」って言って拳を出して、竹本がそこに拳をごつんとやり返して微笑みあって、残りの2人も拳を合わせて、レイラが「さ、スタンバイだよ!」と言って一同コンテスト会場に向かう、とか。

コンテストで優勝はできなかったけどプロデューサー(竹本の恋敵)がバンドの実力を認めてメジャーデビューの話を持ちかけてめでたしめでたし、とか。
そのメジャーデビューの話の場面でプロデューサーが、竹本をデビューさせてやるからもう一度僕との交際を考え直してくれませんかみたいな提案をあけびにするんだけど、竹本がすっと横からあけびの肩を抱いて、
竹本「こいつがいないと、あのギターは弾けないんです」
恋敵「しょうがない・・・世界に通用するギタリストをみすみす失う訳にはいかないからな」
と言って身をひくとか。
そういえば、嫉妬と自分の不甲斐なさに頭ゴチャゴチャになった竹本があけびにキスを迫るんだけど、その時のセリフが
「いいだろ、俺たち付き合ってもう半年なんだからキスくらい」とか。これ、90年代も80年代もすっとばして、昭和30年代とか、なんなら大正とか昭和初期かって話だよな!

なんだっけ、ルシファーのセリフでも痛いのあったな。俺たちはロックンローラーだ、とか言ってたな。あと、スタジオで練習するシーン、みんな集まってるのに一向に弾き始めず、延々とチューニングをしてる。しかも楽器を横に置いてアンプばっかりいじってるという。

そんな感じで、全編ひえ〜っって感じのセリフとシーンがぎゅうぎゅう詰めになってるような。
まあ要はそういう映像なんですけども、台本読んだら(そういう意味で)案外おもしろくて、映像が見たくなりましてつい探してしまったのですよ、ビデオを。
そんでもってぶっ壊れかけのビデオで何とか再生してみたんですけども、いやー、

ひどい!!!

何がひどいって、カメラワークと編集がひどい。それ以前にカメラの手ブレがひどい(笑)
カッコ笑い、って日記なのにつけちゃったよ、おい。そんくらいひどい。

しかし台本だけ読むよりやっぱり映像で観る方が破壊力でかくて面白いです。
テーマソングがリンドバーグの「今すぐKISS ME」とか。
原宿の雑踏でのキスシーンとか。←寄りの画からぶわーっと引いて遠景、という感じに撮るため、遠くから撮りました。男同士のキスシーンなのにカメラが近くにいないってのは相当精神的にきつかったという、役者へのダメージの点では大成功。

そうそう、リンドバーグの曲がかかって、「歩道橋の上から見かけた革ジャンに・・・」の歌詞に合わせて竹本があけびを見つけて叫ぶ感動的なシーンがあるんだけど、歩道橋の欄干部分に赤い字でデカデカと、『薬物乱用、ダメ!絶対!』って書いてあるの。役者よりもそっちが目に飛び込んでくる。これ狙って撮ったんだろうか。これは面白かったわ。

芝居は下手だったな〜。当時は「みんなけっこう上手いじゃん」って思ってたんだけどなあ。
記憶の中ではみんなの芝居もだし、私の撮影・編集ももうちょっと上手くできてるつもりだったのに、どうして10年近く経って自分の拙さに悶えねばならんのか。
まあただ、演技も映像技術も拙いながらに作ってみました、っていう部分を楽しむ種類のものだということで。自覚してなかっただけでお客さんはそれを楽しんだであろう、ということで。

今思えばホント、このライブが自社芸人メインのライブだったからできたんですね。こんなに好き勝手な企画が。
黒木、竹本、ルシファー演じたジェット(ジェットイラブという芸名です・・・伊良部選手・・・お亡くなりになりましたよね・・・)の3人で逆切れガンジーというトリオを組んでいたのですが(今も一応活動中のはず)、このライブにおいてはおそらくこの逆切れガンジーが一番人気なんじゃないかなあと思ったので、そんでもってこの3人を殊更クローズアップした映像を創りたいなという。さすればお客様も喜んでくれるんじゃなかろうかという、そういう企画だったのです。

このショートムービー企画、実は3回やってるのですよ。
第1回目は「シンデレラ」。そのまんまシンデレラです。これは、↑で主役をやった竹本くんが作りました。これの映像は持ってないんだけど、シンプルで編集も上手だった気がするなー。私が作ったのよりかはよっぽど。見所は芸人達の女装、というね。

そんで2回目はもうちょい芝居をやりたいってんで私が好き放題やって、味をしめて3回目をやったんですよ。これは台本も残ってないんですけど、たまたまビデオに一緒に入ってたもんで流れで鑑賞しまして。いやー、

これもひどい!!!!!

一回目よりかはあえての寒さとかダサさが減ってるぶん、より一層ひどさが増してるというか、なんかちょっと笑うのも微妙というか。
っつーか、長かった!前後編に分かれてるんだけど、たぶん合計で20分くらいある。ライブ自体が90分くらいなのに・・・何考えてんでしょうね、ほんと。ちなみに「STAR★〜俺のラブソング」の方は10〜15分くらいだったと思う。
ちなみにこちらのタイトルは「君に伝えたかったこと」。イメージは90年代のトレンディドラマってとこですかね。

主役はイラストレーターの黒木くん。ある晩、締切明けの黒木くんのところに電話がかかってくるところから始まります。電話の相手は竹本。どうやら友人の板倉(ジェット)が離婚したらしい、と。慰めるためにも3人で飲もうぜ!という電話。
電話を切って黒木が手に取ったのは一冊のスケッチブック。開いたページにはある女の肖像画。そこでオープニング音楽が入り、高校生5人組の写真とタイトル。
そして黒木の回想・・・。
ストーリー、この調子で全部書くつもりか?まあ、いいか。ちょっと続けてみよう。
高校時代の昼休み、ベンチに座ってスケッチをする美術部の黒木と、隣に座って本を読んでいる友人の板倉。そこに声をかけてきたのは仲良しの杉本(レイラを演じたなみえですね。元相方です。この話ではヒロイン!)。
竹本とチエもやってきて、場は一気に賑やかになる。竹本とチエは公認のカップルなのだ。一方、黒木は杉本を密かに思っているが言い出せず、見つめることしかできずにいる。
卒業式の日。屋上に杉本を呼び出した黒木。手にはスケッチブック。杉本は、黒木が東京の美大に受かったことを喜んでくれる。
杉本「おめでとう!春から東京だね。・・・私も」
黒木「え?だって杉本、地元の短大受かったって・・・」
杉本「ダメ元で受けてみたら、受かったの!チエと竹本くんも東京だし、みんな一緒で良かった」

その笑顔を見て決心した黒木は思い切って杉本の肖像画を描いたスケッチブックを渡そうとするのだが、

杉本「板倉くんと、離れたくなくて・・・結局告白できなかったけど、同じ東京ならこれからだってチャンスあるよね」

思いがけない言葉にスケッチブックを渡せなくなる黒木。これからもよろしくね、と手を差し出す杉本と、笑顔で握手をする。

杉本は思いを成就させ、5年前に板倉と結婚した。そして今、その2人が離婚したというのだ・・・。
黒木の中で、伝えられなかった思いが膨れ上がる・・・。そんな黒木の気持ちに気付いていた板倉は、黒木に「俺に気兼ねするなよ」と言うのだった・・・。

疲れたのでこのへんでやめますが、まあ、そんな感じの話です。男女七人夏物語だな、これは。

板倉は仕事が忙しいことで杉本との間に溝ができ、杉本への愛は変わらなかったのにも関わらずそれを伝えることが出来ず離婚に応じてしまっていた。ずっと出せずにいた離婚届を提出し、もう全ては終わったんだと自分に言い聞かせるように結婚指輪を外す。
竹本は派手な水商売の女と浮気をして貢がせていたが、チエにその浮気の現場を見られてしまう。駆け去るチエを追いかけるが「私ひとすじになれる?」というチエの問いには答えることができない。去って行くチエをそれ以上追う事が出来なくなってしまう。自分の浮気性が直らないこともわかっているのだ。
一方チエは、竹本との結婚話も出ていたのに、どうしても竹本の気持ちを独り占めすることができないことに苦しみ、自分から別れを切り出してしまったのだ。楽しかった高校時代の写真を見つめ、失恋の痛みを噛み締める。

そしてクリスマスイブ。
黒木は、クリスマスイブに街で偶然杉本に会う。離婚の話から板倉への思いを口する杉本(ここは撮影ミスで、いろいろ語ってるヒロインの顔がまったく映っておらずずーっと黒木の顔のみという大失敗)。板倉は優しすぎて、最後まで気持ちが通じ合わなかったという杉本。それでも前に歩いて行こうとする彼女は、就職先を見つけて、これからも東京に残るのだと言う。
「そんな訳で、私まだしばらくはこっちにいるつもりだから、これからもよろしくね」
手を差し出す杉本。黒木の中に、あの卒業式の日のことがよみがえる。意を決して自分の思いを伝えようとする黒木。
「俺、高校時代からずっと杉本のこと・・・」
が、その言葉を遮る杉本。
「私、一緒に住んでる人がいるの。・・・男の人」
ショックを受ける黒木。杉本もまた、黒木の思いを知りショックを受ける。ごめんねと言いかける杉本だが、今度は黒木がそれを遮る。
「そう、良かったじゃない。あ、じゃあこれからもよろしく」
笑顔で手を差し出す黒木。しかし杉本は握手できない。黒木は杉本の手をとって握手すると、またね、と行って何事もなかったように去っていく。
そんな黒木の背中を見つめる杉本・・・。

そんな訳でヒロインだけちゃっかり新しい恋をしていて、しかもこの後デートで、その一緒に住んでる男とやらから婚約指輪までもらっちゃうのだ。そのやり取りもひどいよ。
杉本「離婚届、出してくれたって」←板倉から連絡が来たのでしょう
男「そう。・・・これでようやく渡せるな」
で、指輪のケースを、すっとテーブルを滑らせ渡す、と。
で、幸せな筈の杉本さんだが、その男と外を歩いていて、ふっと足を止めイルミネーションを見上げ呟くのだ。
「一番輝いてた頃には戻れないんだなあ・・・」
何言っちゃってんだ、お前。って感じですが、いいんです。陳腐で。
演じてたなみえは、台本見ながら「こいつ、やな女じゃないですか?」って言ってたなあ。やな女だね。悪いヤツじゃないんだろうけど、なんかハナにつくね。

で、ラストシーン。そこは東京に来て最初のクリスマスに5人で見たイルミネーションの下。
黒木が独りで立っている。竹本とチエがまだ純粋に仲の良い恋人同士だった時のこと、板倉に告白できない杉本を勇気付けて励まして後押ししてあげた時のこと、そして何も言えずに背を向けた自分のことを思い出し・・・。
気がつくと隣に竹本と板倉も立っている(なんでやねん)。
しばらく3人無言でイルミネーションを見上げているが、やがて竹本が口を開く。
「なんで失ってから気づくんだろうな。大切なものだった、って・・・」
板倉が、ふっきれたような顔で答える。
「大切なものだったって、気付けただけ幸せさ」
黒木は何も言わず、ふっと笑うと二人の背中を叩いて、飲みに行こうよ、とジェスチャーで誘う。そうだな、と歩き出す竹本と板倉。
黒木は最後にもう一度だけイルミネーションを振り返り、そして歩き出す。

おわり。

わざわざ長々と書く意味があったんだろうかというくらいアレな話ですが、これ、あれだな。誰一人自分の気持ちを口に出せてないな。黒木くんなんて、結局告白もさせてもらたえないでさ、片思い昇華できてないんじゃないの?板倉も不器用の度が過ぎるだろ。竹本はまあ、どうせ結婚には向いてないから別れて良かったのかもしれないけど。
つまりちゃんと自分の思いを口にして行動に移した杉本が、最終的に幸せになった、と。そういう教訓を含んだお話ですな。

私の書く男って、昔も今もちっとも変わってない。どうして揃いも揃ってこんなにダメな奴ばっかりなんだろうか。
まあどうしてもくそも、そういうダメ男が個人的に好きだから、という以外に理由は見当たらないのですけど。
あと、仲直りとか謝罪とか告白とかの言葉を言おうとしたら遮られて、もしくは勇気を出し切れずに言えないまま終わるパターンも多い。可哀相に…。

さて、で、ここまではいいんですよ。だって古臭くてありがちで恥ずかしくなるようなトレンディドラマを作ろう!というコンセプトなんですから。私の技術的な下手糞さも、いいんです。もう、それは。アフレコ丸わかりのずさんな音編集とかも、もう、いいんです。

ここからが問題です。
このあとビデオには続きがありました。そう、これは恐怖のビデオテープだったのです。
なんと私、この3本目のムービー、調子に乗ってメイキングを制作してました。超どうでもいい出演者インタビューとか。メイキングなんで作品のコンセプトがどうのこうのという言い訳の全くきかない、ただ私のセンスの無さを強調するだけのトンでも映像でした。
また、インタビューしてる私の喋りが超絶つまんないっつうか、放送禁止レベルの内輪受け極寒トーク。この時の肩書、いちおう「芸人」だったんですけど………。

私ゃ、何を好き好んで独りで羞恥プレイに身をおかねばならんのよという。
しかしそこまで見たのならば日記のネタにしようと思ったのですが、書いててわかったのは、こりゃやっぱり一生封印レベルの恥ずかしさだわい、ということです。