メダル・ウィナーズ・オープン男子編

【男子第一グループ】
バトル、本田、ヤグディンの6分間練習。本田くん、身体めちゃめちゃ絞ってきた!!衣裳も、THEフィギュアスケート!3Aを2回ほど跳ぶが成功せず、しかし会場は沸いていた。
バトルは何の違和感も無く現役時代を思わすウォーミング・アップ。ジャンプも跳ぶ跳ぶ。そういや男子は出場6人のうち誰一人現役時代を生観戦していないのだった。うわあ。ありがたや。
ヤグディン、休み休みいろいろチェック。途中、リンクのど真ん中で立ってたり、リンクに線を引いたり(照明を使うプロだったので、スタンバイ位置の目印をつけていたらしい)。自由な感じに見えたけど、足を引きずるようにして見えたので、身体の調子は大丈夫なのかしらとハラハラ。

ジェフリー・バトル
男子最年少、30歳。綺麗だった・・・。モダンダンスの人が振付したらしいんだけど、その振りを氷の上で再現して、更に足元はスケート用にアレンジしてる訳でしょ?表現と技術に加えて振付能力が無いとできないわけで・・・改めてすげえ。
滑りが美しくてスピードがあって力強くてジャンプもばっちりで、更に表現力が凄いの。大きかった。溢れんばかりのエネルギー。ショーでは観たことあったのに、私はバトルの良さをまったく知らなかったんだなあと思った。これか!これなのか、バトルの凄さって!!という。っつうか、このプログラムめちゃ好き!!!
で、そういえばバトルが金を獲った2008ワールドの頃なんかは、同じプロを観ても多分そんなに良さがわからなかったと思う。自分の感覚を今でも覚えてるんだけど、バトルやランビエールの滑るモダンっぽいプロってあんまり感覚に馴染まなくて、いわゆる「音楽表現」というものもよく理解できなかったし、何なら「つまんないなあ」と思ってた。バカ。それに比べて、オペラなバレエの曲だったり映画音楽だったりという、ストーリーがある曲を使って、そこに芝居が入ってるようなのが好きだった。もちろん今でもド派手な見得切りなんかも変わらず好きだし、小芝居も大好きだけど。

そう考えると前よりも自分の感性の奥行きと言うか幅が広くなったんじゃないかなあと思うし、そうなったのはフィギュアスケートを観続けたからに違いない。他に要因が思い浮かばない。
たくさんの優れたスケートを観るうちに、感性も少しずつ磨かれたんじゃないかなあと。昔ちんぷんかんぷんだったモダンバレエやコンテンポラリーダンスといったものも、今観たらその価値が少しはわかるようになっているかもしれない。
世の中の人たち、少しでもフィギュアに興味をもったのなら、是非生で観るといいなあと思う。テレビでは伝わりきらない部分も、生ならよくわかるし。ほんと、時間とお金が許すならば。っていうか、ちょっと無理してでも観る価値はあるよ、絶対!関係ないけど森下洋子さんのバレエも、物凄く遅ればせながらだけど観に行ってホントに良かったと思う。
ちなみに東京近郊でオススメのスケートリンクは、東伏見スケートリンク。末席でもリンクに近い!スタンド席で全貌も見えてお得!

本田武史
31歳。えっ、バトルと1歳しか違わないの?!随分早い引退だったんだなあと今更ながら。曲はトスカ。現役時代最後のプロのアレンジ?なのかな?すっごい気迫。そして3A跳んだよ!!手はついたけど。もうそれだけで感動マックス。いつ観てもステキなイーグルも有り。今の本田くんができることを限界までやって見せてくれたということに感激して、もう、スタンディングオベーション
キスクラに荒川さん!バトルの点が80点越えだったので点数低く思えるけど、この後滑る4人、実は2位〜5位までほぼ点差無し。

アレクセイ・ヤグディン
私がフィギュアを観始めた2008年以降にもショーで来日してくれてた筈なんだけど見逃したので、今回が生では初見。
めちゃくちゃ面白かった!ストーリー性があるプログラムで、広い意味での表現力に加えて演技力もある感じ。そして現役の頃を思わせる細かく刻むステップとか入ってて、サービス満点。っつうかスター性というかカリスマ性が凄い。私は元々ファンでもなんでも無いんだけど、ビートルズのコンサートで失神したファンの気持ちが少しわかるような、そんな気分になるくらいオーラがあった。人を興奮させる物質を絶え間なく発してる気がする。
もちろん場内スタンディングオベーション。と、大歓声。
キスクラにはニコライ・モロゾフコーチが!でも、モロゾフここでは控えめに、ちょっと距離空けて座ってた。
得点が出てまた反射的に「えー」が出たけど、ほぼ新採点方式で採点してるのでスピンの取りこぼしがあったりするとやっぱり点が伸びなかったみたい。まあ、そもそもあんまりそこまで厳密にレベル取りとか考えてなかったのかもしれないし。
立ち上がって手を振るヤグディンに、またも場内大歓声。

そういや本田くんの滑った後か前かにヤグディンと本田くんがリンクサイドで握手してた気がする。私が覚えてるのはそれくらいだったけど、至るところで選手同士がハグしたり握手したりというファン垂涎の光景が。あと、出番後はもちろんのこと、出番前にも関わらず他のスケーターの演技を観てる人もいたなあ。そうそう、ネットで見かけた情報だけどミーシンコーチ(ヤグディンがタラソワコーチにつく前のコーチで、現プルシェンコのコーチ)がヤグディンの演技後にスタオベしてたとかなんとか。

【男子第2グループ】
キャンデロロ、クーリック、カート。カートだけ下の名前だ。でもブラウニングって書くのもなあ。
クーリックきちんとウォーミングアップ。ジャンプかっけえ!負けじと?キャンデロロもジャンプ練習。お客さんサービスで観客を観ながら周回したり楽しそうな雰囲気をつくりあげる。カートは小道具の傘を手に練習。
やっぱさあ・・・6分間練習ひとつとっても、自分にとって必要なことがわかってて、そこに時間を使うってえの?その辺が集中力ってやつだよねえ。これ、お芝居でも同じだよなあ。自分の確認に使うにしろお客さんサービスにしろ、自分のための時間と空間にしてしまうのは、形は違えど集中力だよ。女子の時も男子の時も、すっごくそれは感じた。
っつうか、今更だけどこの大会の6分練習、豪華過ぎて目が回る。3人ずつでも目が足りない。自分の分身があと2人は欲しかった。オープニングとフィナーレ用に11人いてくれても構わない。チケット代が凄いことになりそうだけど。

フィリップ・キャンデロロ
ダルタニアン!伝説のダルタニアンだよ!!!FaOIとか観に行けなくてしょんぼりだったのが、まさかこうして生で観られる日が来るなんて!!内容的にはもう、試合じゃなくてショーだった。
でも、いいんだ。キャンデロロはそれで。
とは言っても決して真剣度が足りなかったとかそういうことではなく、むしろプロになってからますますエンタメ性を増したキャンデロロのプログラムという感じでとても楽しかったし、とにかくサービス心たっぷりだった!キャンデロロスピンとかバックフリップとか、もちろんダルタニアンのストレートラインステップや小芝居、雄叫び、ダルタニアン式お辞儀とか、おしっこちびりそうなくらい嬉しかった。
キスクラではお馴染みのコーチが隣に座ってる!うわあああい。しかし何でもありだったぶん点数は低め。ディダクション(減点)も取られてる。もちろん観客から「えーっ」が。
お客さんは終始楽しんで喜んでたし、スタオベに大歓声だったとはいえ、さすがにこの点数を本人がどう感じてたのか気になる・・・。

イリヤ・クーリック>
かっけえ。でかい。かっけえ。肉体美、それを包み込み隠しこむ衣裳の胸元からわずかに除く豊かな大胸筋と胸毛。悩殺。
滑り始めて更にでかく見える。かっこいい。もう、かっこいいよ!!!長野の時はキャンデロロオンリーだった私の心が今になってもうクーリックにこんなにも惹きつけられるなんてっ!!!
フレンズオンアイスで観た時にもあまりにカッコ良くてぎゃーってなったけど、今回の本気のクーリックはまた格別にカッコ良かった。ジャンプもルッツ2回も跳んじゃったり!かっけえええ!!!
若い時の可愛い王子様ふうな時も良かったけど、今の大人の男!って感じの骨ばった顔と表情がたまらん。でも笑うと昔のままの可愛い感じ。ホント、いつまでたっても王というより王子?貴公子?って感じ。
近くに座ってたお客さんが、オープニングからフィナーレから表彰式から、もちろんクーリックの滑りの前後も6分練習の時も、「イリヤー!」って夢中で声かけてた。ああ、ずっとファンなんだなあ。つくづくいい大会だ!

<カート・ブラウニング>
生では初見ですともさ。プログラムは雨に唄えば
これはね、映像でもなんでもいいから観てください。観りゃわかります。天才的に素晴らしかった。エンタメ性、技術、カリスマ性、楽しさ、表現力、演技力、ミスしない強さとミスをカバーしてお客さんの気持ちを途切れさせない力、プログラムの面白さ、完成度の高さ、何もかも全てが素晴らしかった。もっとずっといつまでも観ていたかった。
伝説のスケーター達の演技に大興奮した観客に大歓声で迎えられたのに、滑り始めるやいなや肩の力の抜けた演技で客席をリラックスムードにさせ・・・ておきながらまたその滑りで観客を盛り上げ興奮させ、そしてフィニッシュの余韻が消えるやいなや大熱狂のスタンディングオベーション。これが全てを物語っていると思う。
キスクラに引っ込んでからも、表彰式の入場から退場まで、全ての局面で観客を楽しませスケーターを楽しませるプロ意識の高さ。本当に素晴らしかった!!!

感想を書いてて振り返って思うのは、アマチュア選手とプロとの違いって、がむしゃら感とか押せ押せなムードとかが有るか無いかっていうのも大きいのかなあということ。プロスケーターはいつでも同じクオリティの滑りを見せることができなきゃいけないというか、一番に考えるのはおそらく観客のことだと思う。それに比べるとアマチュアの方は、もちろん観客のことを考えてる選手も多いけれど、それ以上にアスリートとしての自分との闘いの部分が大きいのかなあと。まあ、人によって多少の差はあるだろうけど。

そういう観点でみると、やっぱり今回の出場「選手」達は、そういった現役ならではのがむしゃら感っていうのはおそらく無かった。いや、バトルにしろ本田くんにしろクーリックにしろ、本気感は漲ってたけどね。でもおそらく、闘志は現役時代の方があっただろうという(無かったら困る)。
だからこそ休養後の復帰というのは本当に特別な勇気と努力が必要な訳で。肉体鍛錬だけじゃなく、精神力が必要な訳で。
バンクーバー五輪でいうと、ほぼ4年間競技から遠ざかっていたペアのシェン・ツァオ組の金メダルや、プルシェンコの銀メダル(と、ランビエールの4位入賞も)は本当に超人レベルなんだなあと思う。

で、その闘志の有無とは関係なしにいいものはいい、というのも強く感じた。プロはやっぱすげえや。
バトルの、引退してなお進化する感性と技術。
本田くんやクーリックの、試合に臨むにあたって技術と精神力の漲りを取り戻す意識の高さと気迫の強さ。
ヤグディンやキャンデロロの、例えばジャンプが跳べなくなってもまた別の部分で補って観客を満足させるというエンターテイメント性とカリスマ性。
そして、カート・ブラウニングは・・・とにかく凄い。技術、鍛錬、アイディア、感性、プロデュース能力、全てが凄い。いやあ、凄い。

それと、みんな揃って「スケートが好き」感が溢れてて、それが何より嬉しかった。でなかったら、こんなしんどいこと続けらんないよね!まあ、各国事情はよくわからないので(ロシアとか特に)わかんないけどさ。少なくとも、競技から遠ざかっても称賛を受けられるのは努力を続けている者だけだと思うから。
好きなことを続けるためには精神力が必要。
他にできることが無い、っていうのは消去法では無く、本当に自分が望んだものがそれしかないんだ、ということなんだと思う。

夢のように幸せな時間を過ごしつつ、実はとっても勉強になる、そんなひと時だったのかもしれない。

ああ、やっと書き終わった!また書き足りないことがあったら後日補足をアップしますです。
お付き合いありがとうございました。