褒めてみようシリーズ、その3・村山周編

むらやま しゅう

ものおじしないのは今どきの若者の特徴なのか、彼の特性なのか。

初めて会ったのは3月の舞台の客席だった。芝居を始めたばかりだという彼とは、ほんの二言三言、言葉をかわしただけだった。ごくフツーの若者だという印象しかなかった。

その3ヶ月後くらいに今度は出演者としての彼と再会した時、開口一番
「チエさん、お久しぶりです!」
と笑いかけてくる彼を見て、一瞬ひるんでしまった。馴れ馴れしいというか図々しいというか、しかしこちらが思わず「可愛いやつだなあ」と思ってしまうツボを突いているというか。

お調子者で素直で元気でどんなにダメ出しされてもひるまないで食らいついてくる。逆に、もっともっともっと言って欲しい!何もわからないからもっと教えて欲しい!と言い過ぎて、「ちょっとは自分の頭で考えろ!」と言われる勢いである。
といっても、自分の頭でもそれはもう考えすぎるほどに考えているのである。それで今度は「頭で考えすぎるな!」と言われてしまう。
彼の良いところは、その自分で考えてること思ってることを、きちんと素直にどんどん口に出すところだ。こちらの言ったことをどう受け止めてるのかどう解釈しているのか。自分ではどう思っているのか。
何せまだ役者として歩き始めたばかりなのだ。実践と同じくらい言葉にすることだって大事なのだ。

歌が上手い。運動神経が良い。声が大きい。フットワークが軽い。社交性もある。バンドでドラムなんかもやっていたらしいし、小学校から高校まで幾つかのスポーツをやっていて、どれもなかなかの成果を挙げたらしい。何でもできる。万能だ。
そんな村山周が、芝居だけはどうにも手こずっているようだ。
「難しくて難しくて、果てが見えない。」
芝居というものに対してそんな風に言いながらがむしゃらに食らいついてくる村山周。
深夜の1時過ぎに、
「今日の稽古のダメ出しください」
と電話をかけてくる村山周。

面白くて面白くて、底が知れない。