いい役

「いい役!」とか「面白い役!」と役者が言ってくれるととっても嬉しいのだ。
で、お客さんからそういう感想をいただけたら役者も作者もこのうえない喜びを感じるのだ。

実のところ「つまらない役」「だめな役」なんてものは作り手側には存在しない筈なのだ。
役者の観点から言って、そんな奢った事を言うようでは、恥であり名折れであり、役者失格なのである。
作者の観点から言って、そう思われる役を書いた時点で何の弁解の余地も無く三流なのである。

つまりどの役者もどの作家も、もちろんどの演出家も、作品の登場人物達をいかに魅力的に創るかという事を念頭に置いているのだ。

いかなるダメ人間でも、
いかなる極悪人でも、
いかなる凡庸な者でも、
いかなる偽善者でも、
いかなる独裁者でも、
魅力的に創るのだ。

お客さんから憎まれても愛されても恨まれても構わない。ただただ「面白い」と言われたい。
ただただ魅力的な人物を、舞台上に息づかせる為に日々を過ごすのだ。稽古を積み重ねるのだ。

そう思っている。