うまいとかへたとか

「芝居が上手い」なんて耳にしますが、上手いっていうのもなかなか定義が難しいと思います。
何をもって上手いというのか?

セリフが淀みなく喋れるとか、自然な演技だとか、存在感があるとか?

でも場合によっては、セリフに引っ掛かり突っ掛かりがあった方が良い時もあるし、不自然に見える演技が胸を打つ時もあるし、存在感=善とも限らないし。

そう思うと「芝居が上手い」という使い方をする時の「上手い」は、単純に言葉の意味としての「上手い」ではあっても、褒め言葉に直結してるとも言い難いとは思うのですが。
でもまあ明らかに皮肉っぽく言ってるんじゃない限りは、
「芝居が上手い」
と表現する場合は、その対象への好意が少なからずある時だと思います。

ちなみに私が今まで「芝居、上手いなあ」と思ったのは、草笛光子さんと石坂浩二さんです。ぱっと思い付く限りでは。

ただ、やっぱりただ「上手い」と言うだけでは何か物足りない気がします。なんつーか、モーツァルトの曲をずっと聴いていたくなる時とか、「カリオストロの城」を何度もリピートして舐めるようにキャラの動きを観てしまう時とか、ジェレミー・アボットのスケートの「つなぎ」の部分を観てる時とかと、似た気持ちになる。「上手い」+「快楽」で陶酔してしまう気分。

フラガール」しか観てないけど蒼井優ちゃんもいいなあ。あ、松重豊さんも。きっともっといる。

舞台の役者さんだと、古田新太さんには、わし掴みにされました。保村大和さんもステキ。
でも舞台だと、「上手いなあ」と冷静に観るのはちょっと難しいです。作品としてはあまりのめり込めない芝居の方が、冷静に観られるようです。

自分の好みの芝居をする=芝居が上手い、とも言えなくもないですかね。周りの評判は良いけどちっとも上手いと思わないっていうのは、その役者の力量云々では無く、単に自分の好みじゃないというだけで。

ところで、「人の話を聞いてない役者」ってのがいます。稽古場のみならず、本番ですらそんな有様で。
もう、問題外なんですけど。
これに関しては、好みとかはさておき(「人の話を聞かない」という特殊な役柄で無い限り)「話にならない」と、言い切ります。
そのまんまですけどね。会話にならないんですもん。

規模の大小に関わらず、役者の質って本当に差があるなあと思う次第でありますよ。