出会い

4年ほど前だった。
ふと入った弁当屋で、タケノコやキクラゲを甘辛く味付けした惣菜を買った。
家に帰りそれを何気なく口に運んでいると不意にシャリッという心地好い歯ざわりを感じた。

何だ、今のは?

微かに鼓動が速まる。しかし舌の上には甘辛味が残るばかり。歯ざわり以外の手がかり無きまま私は箸で惣菜をほじくり返した(←ひどいお行儀)。
と、何やら薄切りの生姜のようなものを発見。

こいつは…。

口に運んでみると、至福の食感。

お前か!!

しかしながら濃いめの味付けに消されて、そいつ自身の味がわからない。
さらにもう一片を探し出し、味が無くなるまで舌で転がし(←ひど過ぎるお行儀)おもむろに噛んだ。

極上の噛み心地。が、やはり味がわからない。噛みしだきながら、ゆっくりと鼻で息を吸った。
うっすらと芋のような風情の味を感じるも、はっきりとはわからない。
矢も盾もたまらずに(←って、こういう使い方するのか?)先程の弁当屋に走った。

件の惣菜の前に行くと、材料だのカロリーだのが書かれたカードが置いてある。
タケノコ…キクラゲ…さやえんどう…くわい…
くわい?

こいつに違いない!何度もカードを見返すが、他の連中はどいつも覚えがある。どんなに味を消そうとも、私がそいつらの食感を間違えようはずは無い。

くわい…音に聞くも、その姿を拝むのは初めてだった。

噂に違わぬ、か…。

その日から私は薄切りの小さなくわいを追い求め、惣菜を買い続けた。食べれば食べる程くわいに酔いしれるのを実感しながら。

やがて近所のスーパーに、くわいが並んでるのを発見した。

まるで道端で偶然にも好きな男子と遭遇した時のように胸が高鳴った。気が動転して目を逸らし前を通り過ぎ、が、すぐに呼吸を整え、気持ちを落ち着かせながらゆっくりと歩を戻す。

ああ、これでー。

これでようやくお前を貪ることができるのだ。甘辛じゃない、本当のお前の味を口にできるのだ。
歓喜に震えながらくわいを手にレジへ向かう。

ほぼ味付け無しで食した初めてのくわいは、本当に美味しかった。茹で過ぎて食感が柔らかくなってしまったが、それでも満足だった。

衝撃的なまでのくわいとの出会い。

それに匹敵するくらいの出会いを、また体験してしまった。
劇団ギルド所属の加藤敦洋さんという素晴らしくステキな役者さん。日曜くらいまでシアター風姿花伝の芝居に出てる。

うちの芝居に出てくれないかなあ!