直接の知り合いでも無いし、生前その人がどんな人柄だったのかは知らない。
仮に口が悪いとか、意地が悪いとか、度を超してそういう性格だったとしても、でもそれは
「死をもって償わなければならない」
ほどの罪なんだろうか?
私はそうは思わない。
妹を殺害した兄のニュースを、未だに思い出しては辛くなる。妹は勝ち気で、兄は浪人生で、そこにどんな日常があったかは知らない。兄がどれだけ思い詰めていたかも知らない。
でも、
殺された妹も悲しい。
殺した兄も悲しい。
今日もそれを思い出した。
旦那が依頼した別れさせ屋に引っ掛けられた奥さんが、それを元に離婚されて、あろうことかその別れさせ屋とその後も関係が続いてしまい、挙句、その別れさせ屋に殺害されたという事件。
その別れさせ屋にくだされた判決が、懲役15年というニュース。
殺人に対しての刑の重さについてどうこうとか、別れさせ屋を頼んだ夫の倫理問題についてどうこうとか、そういうのは私がいきりたっても仕方ないから何も書かない。
我慢できないのは、
「そもそも奥さんが不倫しなければ…」
という意見。
不倫が許せるか許せないかは人それぞれだとはいえ、
不倫は死に値する罪なのか?
殺人を犯した人間でさえ、死刑にならないこともあるのに?
「被害者にも非がある」かどうかは、どんなケースでも他者が知り得ることは難しい。
でも、
「仮に被害者に非があったとして」
「それだけの罰を受けねばならないほどの罪を犯したのか?」
目に見える耳に聞こえる材料しか知らない我々が、それに対して「ノー」と断言することはできないけれど、
「イエス」とだって言えないと思う。
いや、なんなら私は「ノー」と言おう。
不倫したからと言って、それは殺されなければならない罪では絶対に無い。
もしもその不倫の相手が別れさせ屋ではなくパート先の同僚だったとしても、出会い系で知り合った見知らぬ他人だったとしても、ノーだ。
痴情のもつれだろうと金銭トラブルだろうと怨恨だろうと、家族や恋人に殺された人間に対して
「被害者にも非がある」
なんて、どういう神経なら言えるんだろうか。日常的に暴力を振るっていたとか、大金を脅しとっていたとか、そういう、加害者がにっちもさっちもいかない状況に追い込まれていたという証言があるならまだしも。
何もわからない第三者が死者をおとしめるような事をどうして言えるんだろう。
何様なんだろう。