続き

実のところ、父が一番激しく苦しがっていた様は母と兄しか見ておらず、そのせいか私も姉も、いつまでもこれが現実のこととは思えないような、すぐに父の容態は良くなるんじゃないかというような、そんな気持ちでいた。

翌日の早朝、5分間だけ許されたICUでの面会。
父は睡眠剤で穏やかに寝ていた。たくさんの管をつけていた。

そして2週間後。

一般病棟のベッドの上で大股開きでテレビを観ている父の姿に、私は「喉元過ぎればなんとやら」という言葉を思い出していた。

「滅多にない体験なんだから、ICUで管たくさん付けて眠っている姿、ビデオに撮っといてあげれば良かった。」
私がそう言うと、父は笑って、そうだなあと言った。
こんな会話ができることを幸せだと思う。

まだまだ全快までは時間がかかりそうだけれど、そして父の退院まで母は一人で寂しいだろうけれど、親不孝な私は東京に戻ってきてしまった。
のん気にフィギュアスケートの日記書いてられる幸せ。
母に「川原泉さんの漫画、送るねー」なんて平和な電話ができる幸せ。

自分も含めた皆みな様、咳と熱と頭痛には要注意。風邪かな?と思った瞬間に病院へ行きましょう。そんでもって、しつこくいろいろ検査してもらいましょう。「この患者うぜえな」と思われるくらい質問しましょう。気が済むまで病院をはしごしましょう。インフルエンザじゃなくてもただの風邪とは限らず。ただの風邪と診断されても、安心とは限らず。

お医者様は神様では無いのです。自分と家族、大切な人の身は自分で救いましょう。

今回、神様では無いにも関わらず父を救ってくれたお医者様と看護士の皆様に深く深く感謝です。
それから、血縁者であってもなくても、家族って支えあえる関係なのね。親戚ってありがたいものなのね。
この歳になって初めて家族の絆ってやつを体感しましたですよ。昔からずっと私の周りにはあったはずなのにね。
我が家はなかなかドライな家族だと思ってたんだけど、ドライだからってホットじゃないとは限らないし、まあ、ホットじゃないからって愛がないとは限らない訳で。クールでドライな愛だってたくさんあるよね。ウエット過ぎる愛も、熱過ぎてうっとおしい愛も。いろいろ。

ところで世の中にはびこる家族の愛情物語みたいなのって馬鹿げてるよなあ。こんな日記書きながらなんだけど。
世の中ホントにいろいろで。十人十色、それが二人以上集まった人間関係なんだからもう体系付けるのも無茶なくらいいろいろな関係や愛情があるんで。