今だけ、一瞬だけ

この人いいなあと思える役者と一緒に芝居を作れるっていうのは本当に奇跡的に幸せなことだと思う。
めぐり合わせというものがあり、自分が望んでもそれが叶わないことの方が世の中には多かったり。

私は私のために芝居をやっている。面白いものが観たいから。
だから、面白い芝居を作るためにできることは全てやりたい。

今だけ、このひとときだけ一緒にいられる仲間と、何年経っても誰もが忘れられないような、面白い舞台を作りたい。

「また一緒にやりましょう」が叶うにせよ叶わないにせよ、彼ら彼女らの今この一瞬を切り取って残す権利は、世界中で私だけにある。

なんという幸せ、なんという重さ。

「観に来てくださってありがとうございます。でも、観に来られて良かったでしょう?面白かったでしょう?」

これを観られたあなたはラッキーなんですよ。
不遜な言葉ではあるけれど、そう言い切ってしまえるほどの、そんな芝居を作りたいと、いつも思う。

野菜さん、お肉くん、魚ちゃん、穀物の皆さん、etc.美味しいあなた達に出会えて光栄です。美味しい素材をありがとう。
美味しい料理にしますからね。

「食べてくれてありがとう。でも、こんな美味しいものを食べることができて、お客様も幸せだったでしょう?」
と、言えるように。

美味しいものだからこそ、ことさら腕をふるって美味しい料理に仕立てたいと思うし、出来たものをみんなに食べてもらいたいと思う。嬉しさを分かち合えれば、なお嬉しい。

なるほど、そういうことだったのか。