演出家の力と役者と

某劇団の演出家さんで、とにかく本能で突き進んでるような感じの方がいらっしゃるのですが、その人がとてもキャスティングがうまいんです。
台本無しで作っていくスタイルのお芝居で、一番初めに基本設定に沿って配役するのですが、ここが凄い。
何が凄いって、人づてで紹介された、まだ演技も見たことない、プライベートの顔を少し見ただけ、という役者の本質を見抜いて、会ったその日にベストポジションに据えるのですよ。

私が初参加した時の芝居も、正直最初は「なんか違和感ないですか?その配役。」と密かに思ったのだが、蓋を開けてみたらば・・・。
なんでしょう。野生の勘?経験の成せる技?それとも生まれ持った才能?
稀に「読み違えたー!」と言ってる事もありますが、それは稽古次第でどうとでもなるようで。

私が長らく所属してた劇団の座長は、憎らしくなるくらい何でも出来る人なのですが、中でも「初めて舞台に立つ人」とかを、ものすごく魅力的に仕立て上げる能力の、ずば抜けて高い人でした。
「出来ない」ということさえも面白がってくれて、その人の持ち味を最大限に引き出してくれる演出家でしたね。
それでいて目指している場所は非常に高いところにあるという、すごいバランス感覚の人でした。

さて、発条ロールシアターはというと、昨日やっと全出演者が決まりました。そう、実は役者の数が足りてなかったのですよ。
それもこれも「自分の気に入った役者しか出したくない」とかふざけた事を演出が言ってるのが悪いのです。すみません。
正確に言うと「自分の気に入った役者、あるいはまったく知らない役者としかやりたくない」でしょうか。
知り合いに役者さんを紹介して欲しいと頼んだ時のこと。

「知らない役者って、あなたが知らない役者ってこと?」
「いや、誰も知らない役者。私はもちろん、あんたも知らない役者。」
「俺の知らない役者をどうやって紹介するんだよ」

というやり取りをしたこともありましたが、人づての人づての人づての人とか見つかるものですね。ありがたや。
それと、現代のネット中心社会とやらに対して私はあまり肯定的ではないのですが、今回はネットの出演者募集をしたりして、恩恵を賜りました。こうして雑文も垂れ流せるし。

未知なる役者さんと一緒に芝居作りするのって、面白いです。たまにギョッとするような事態もありますが、そういうのがまた良い方向につながったり。
まだまだ未熟者なので、役者連にいっぱい刺激をもらって面白舞台に向かって突き進んでゆきますわい。