狂恋デカダンス

(2003年10月オフィス★怪人社。於、下北沢駅前劇場
これはいい作品だ。久々に観たら面白くて二度観してしまった。他の公演に比べてきちんと練習されてる感がある。いや、もちろんいつだって稽古はきちんとしてるけど、ビデオを見返して稽古場での役者陣と作品の成長ぶりを鮮明に思い出せるのは狂恋が一番だなと。
作ってる当時は椿は桂木に恋をしてるという前提でいたんだけど、今回観た印象では、あまり同性愛くささが無いなあという感想ををもった。恋とかいうよりはすごく大切な人、唯一心を許せる人に執着しているという感じを受けたな。それが余計に椿の痛々しさを増していて良かった。観客の皆さんや他の出演者・スタッフはどう観たんだろうか?
桂木というのはいい男だ。半人前だからこそ為し得る事って言うのはあるんだな。桂木が現れて、そこに春の訪れを感じられるような、そんな素敵な存在。もっとこう演じて欲しかったというダメ出しは差し引いた上で言う訳だけど。
お気に入りの場面を二つ。クライマックスで呼び覚まされた椿の子供時代。少年時代のあの悲しい叫びを聞くと、もう必ず涙が溢れてしまう。それと桜の中のラストシーン。何か永遠を信じたくなるような、自分自身が救われたような気がして、胸が熱くなる。エピローグは特に演出チーム内でいろいろな意見が飛び交い、何日も闘った結果ああなったのだけど、私はベストだと思っている。たくさんの悲しみの中に生きていても、大切な人が自分の中に変わらず存在し続けると言うことはかけがえのない幸せを生みだすのだと思っている。『太極ベイビー』も『アインシュタインロマンス』も、遡って『COLD SLEEP』も、そんなささやかな幸せを支えに人々が強く生きていくところが私は何より好きだ。
が、今回の『象面ガネーシャ』は、そうはいかない。毎回稽古の度に、「ああっ、こんな楽しそうにしているのに最後はあんなことにっっっ!!」と思って腹が立ってくる。しかしそこで話を改ざんしてしまったら、この上なくつまらない舞台になってしまうんだろうなあ。皆様、ここはひとつ、観にいらっしゃった際には私と共に、悲しんだり憤ったり地団駄踏んだりしましょう。